2部分:第二章
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第二章
時折茂みがガサゴソと鳴る。何事か、と横を見ると気配は消えている。
山ではよくあることだ。小さな獣が動き回っているのだ。これまでも彼はこの山で幾度も肝試しをしているのでこうしたことには慣れていた。
「どうせ鼬であろう。下らぬ」
実際にそれは鼬であった。他にも狐や狸もいる。夜の山には様々な生き物が蠢いている。
ミミズクが飛び木の上では梟がその丸い目を輝かせて止まっている。空には限り無く黒に近い青の空に黄色い月が不自然な程大きく光っている。
平太郎はその中を黙々と進んでいった。
山道自体はどうということはない。彼にとっては遊び場である。だが酒のせいか少し疲れてきた。
「暫し休むか」
側にあった岩に腰かけた。そして一服した。
落ち着くとまた歩くのをはじめた。そして頂上に辿り着いた。
「ふむ」
そこは普段と変わりなかった。それを見届けると彼は今来た道を引き返して権八のところに戻って行った。
「何かあったか」
平太郎が帰って来るのを見ると権八はまずそれを問うた。
「いや、何もだ」
だが彼は頭を振ってそれを否定した。結局彼もその時は何にも遭うことはなかった。
「やはり化け物なんておらんもんじゃのう」
「ああ、しかしいい余興にはなったわ」
そして二人はまた酒を酌み交わすのであった。その日はそのまま朝まで飲んだ。
それから一月が過ぎた。月は文月になった。
すっかり暑くなってきていた。日は高く昇り毎日嫌になる程照らしてくれる。朝には朝顔が露で化粧して姿を現わす。夕立の後はそのうだる様な暑さもましになり夜と共に蛍がその淡い光で闇の中を照らす。月はその上で白く光り輝いていた。
平太郎はその時家の中で飲んでいた。やはり夜は酒であった。
「美味いのう」
瓢箪が二つ転がっている。そして今三つめに手をかけていた。
一杯口に入れる。酒の味が舌に染み入り香りが口の中を支配する。時は丑三つ時頃であろうか。
不意に燈火が消えた。だが風の気配はない。
「何事じゃ」
顔を上げれば障子が火が点いた様に赤くなっていた。火事かと思うがどうやらそれではないらしい。
「熱くはない」
そうであった。そして熱気すら感じなかった。
よくよく目を凝らせば障子は真ん中だけが赤かった。それはまるで円の様である。
「目か」
ふとそう思った。立ち上がり障子を思いきり開ける。
「何奴じゃ」
そこの向こうには廊下がある。そしてさらには壁がある筈であった。
だがそこには壁とは別に何かがいた。それは巨大な大入道であった。見ればその目は顔の真ん中に一つしかない。しかも爛々と赤く光っている。まるで闇の中の篝火の様に。先程の赤いのはこの目であることは疑いようがなかった。
「化け物か!」
平太郎は問い詰め
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