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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三十一話 砂上の楼閣
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ら。
之では諦める事すら出来ない。
だが、それでいい……如何に前世の記憶が有ろうとも人生は一度なのだ、たった一度なのだ。
失えない、失ったらそれで終わりなのだ。
大切なのだ、彼女が。唯一無二なのだ。
失ったら戻ってこない、己が愛した唯依は―――繰り返したら、逆戻ってしまえばそれはもう己も彼女も別人なのだ。
何より失って戻ってくるものに本当の価値はない。
「そうだな、妻となる女の笑った顔が見たい。……こんな願い、お前からすれば腹立たしいかも知れんがな。」
「そんなことは……」
「だが、敢えて今一度言う。己に力を貸せ、復讐という弔いを成したいのならな。」
痛いところを吐く言葉に言いよどんだ甲斐。
失った者と失っていない者、その差はどうしようもなく隔絶し埋め難い。
しかし忠亮はそこからさらに追撃を言い放つ、どのみち今の体制ではBETA相手に勝てるわけがないのだ。
官僚は自己保身にべったりで国家存亡の危機だというのに日和見っている。
政治家は榊陣営がどうにか張っているが民主主義政治の政権は短命だ。また戦時特例法案も不整備この上なく、榊退陣後は有象無象の素人政治家による連立政権とその集離が繰り返され、責任を取りたくない責任者たちの消極的な内輪揉めで兵士は戦力の逐次投入を強要されて、BETAの脅威の前に緩やかな自殺の路を歩む。
そもそも、殆どの国家で戦時特例が存在するのは戦争中では民主主義は何の役にも立たないと知っているからだ。
参加者全員が善人であるシステムは所詮は性善説に基づいた妄想でしかないのだ。
そして、そのシステムで甘い蜜を啜るための誤魔化しはBETAという絶対の捕食者を前に限界まで来ていると見た。
この嘘と偽善の上塗りで作られた民主主義という楼閣が崩れ去るその時、何を信じ何に依って動くのか―――考えるまでもない。
「……なるほど、君の意図は分かった。僕は全霊を以て尽力すると誓おう。」
「助かる。」
言わんとしている事の意味を悟った甲斐が改めて忠誠を誓う。
今のままでは未来が無い、今のままでは既に逝った犠牲が無駄になる。
修羅だった青年は光ある未来を求め武士となる。
武士だった青年は過去の断罪を求め修羅となる。
白と青の青年は共に修羅にして武士。
共に血風雷火を求めし戦いの鬼、されどその戦いは誇り高き守護の戦い。
正反対ながらもそれ故に本質を同じくする二者。
共に抱えるのは理不尽への憤激。
大切なものを奪うやつが許せない、大切なものを奪ったやつが許せない。
その純粋な怒りと憎悪は、その本性を曝け出す時を待ちのみ……静かに牙を研ぐ。
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