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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三十一話 砂上の楼閣
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合、十中八九許嫁となる。
もし……自分が唯依が殺されたらと思うとその気持ちは痛いほどに共感できる。
「―――甲斐。」
「だから君が変えてくれ、悲劇の連鎖を……今のままじゃ志摩子は犬死だ。そんなのは許せない。」
切実、悲痛な訴えが忠亮の胸を撃つ。
今の流れを変える、確かに戦術機の劇的な革命と呼べる性能向上が有れば多少は変わるだろう――しかし、それでは足りないのだ。
この日本は平和主義なんぞという麻薬に酔い、既得権益に胡坐をかく官僚どもや人権団体、その犬に過ぎん日和見政治家どものせいで勝てるべき戦いを逃した。
其れこそが諸悪の根源。病原を叩かねばこの流れは変わらない、奴らの楽観と偽善がまた何千万という人間を殺す。
全てが善人でなければ成り立たないシステムなんぞ欠陥品でしかない。
そんな偽善を放置し、愛しき者が殺される未来を看過できる理由はない。
幾つもの絶望を、幾つもの終焉を知っていれば尚更だ―――『流れを変えなくては』その思いは己の中に根付いている。
「間違えるな甲斐……己が変えるんじゃない、“俺達で”変えるんだ。他力本願にするんじゃない。」
「厳しいね……だけど、その通りだ。それにしても君がそんな事を言うのは珍しいね。」
「今は危機ではあるが転機でもある。此処で踏ん張れねば国家を再生し、先進国と返り咲く事叶うまい―――己も妻を迎える身だ。踏ん張らねばならん時が来たという事だ。」
「なるほど……それは頑張らないとダメだね。」
脳裏に過るのは既に逝った戦友たち。
胸裏を締め付けるのは何度も、何度も繰り返した唯依との別離。
相思相愛になれたが戦いの中で果てた事もあったし、相思相愛でも結ばれずそのまま彼女を失ったこともあった。
不安定化する情勢下でテロで彼女を失ったこともある。共に最期の時を過ごし消えた事もある。
幾つもの絶望と、幾つもの無念と、幾つもの憤怒と、幾つもの慟哭と、幾つもの憎しみを抱えて己は今此処に在る。
次こそは、次こそは勝つのだと―――暗黒を打ち払い、嵐を走破し、光ある明日をつかみ取るのだと歩み続けてきた。
擦り減りながらも歩み続けてきた。
輪廻のたびに恋をして彼女を愛した―――たとえそれが報われても報われずとも関係なしにただ走り続けた。
その記憶は共感することは出来ても自分の記憶だという認識は持てない。
例えるのなら、自分は家にいるのにいつの間にか出かけていて、そして気づいたらその出かけている時に起きたことをテレビで見て終わっていた……そんな現実感のない記憶だ。
だからこそ、この輪廻に……今の自分が唯依に抱く感情は唯一無二。
俺に次はない。
常に無限螺旋の一輪は絶対なのだ……次の自分は始まりを同じくしただけのよく似た別人なのだと知っているか
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