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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三十一話 砂上の楼閣
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武力の後ろ盾無い約束事なんぞ寝言にも劣る。貴様も斯衛の軍人となったのだ平和ボケは大概にしておけ。」

清十郎の言葉に鋭い批判が助六郎から飛んでくる。
同盟や条約が一方的に破られ滅んだ国は古今東西数知れず。格闘技の試合とて相手がインターバル中に襲ってくることもある。

基本的に条約などの決まり事というのはそれを守らせる暴力が無ければ文字通り絵に書いた餅以上の価値はない。
日本はそれを大戦末期の日ソ相互不可侵条約の一方的破棄によるソ連による樺太侵略、そして日米安保の一方的破棄等の流血の経験から学んだはずだ。
それでなお日和見った意見を吐けるのは平和ボケ、蒙昧と言われても仕方のない事柄だ。


「ふふっ懐かしいね。」
「何がだ?」

清十郎が助六郎からお小言をもらい続けている横で甲斐が小さく笑みを零す。

「訓練校時代、ボクシングの試合をみんなで見ていたけど君は選手が残心を心掛けていないと知ると興味が失せたって見るのを止めたじゃないか。それに似ていると思ってね。」
「そんな事もあったか。」

確かボクシングの試合でラウンドが終わりインターバルに入った時だ、その選手は双方ともに対戦相手に背を向けコーナーに戻っていった。
相手が急に後ろから殴りかかってくるかもしれないのに―――当然、そんなことはスポーツマンシップに反し反則だ。

しかしだ、仮にも格闘家ならば相手の善意に期待して隙を曝す間抜けの試合は真剣みが無い為見る価値が無いと判断したのだ。
正直、飼いならされ牙を失った虎の八百長試合を見せられている気分にしかならない、そんな茶番に勝ちなんぞない。野良猫の縄張り争いの方がよほど見る価値がある。


「相手の善意や良識に期待するな。他力本願となれば人間は堕落する―――そしてそれが自身の命さえも他人に預ける事だという事に気付いていたのに僕は止められなかった。
 ああ、僕は屑だ。骨の髄まで腐っている……守りたかったモノがあったのに、何に立ち向かうべきだったのか瞭然だったのに。」
「……それは己も同じだ。」

甲斐の言葉は耳に痛かった―――しかし彼はその言葉すらも否定した。

「違うよ、僕と君は違った。僕は守りたいモノが有ったのに守らなかったんだ……だけど君は守りたいモノが無かったんだろ?
 そして何時か守りたいと思うモノが出来た時のためにその時後悔しない為に我武者羅だった。」
「お前が正常で俺が異常だった、唯それだけだろ」

「それでもだよ、僕は憎い……どうしようもなく、僕自身と志摩子を殺したこの国とBETAがね。」

一抹の狂気を宿して甲斐が言う。その表情は辛酸を舐め、苦汁を飲み痛みに耐えるかのように鎮痛だった。

確か奴には義理の妹がいたなと思い出す……武家の養子入りはその家に女の直子がいる場
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