第四十八話 薊の師その四
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「あと少しだよ」
「そうなのね」
「さて、着いたらな」
「その散髪屋さんに」
「お師匠さん紹介するな」
こう裕香と他の面々にも話した。
「散髪屋の裏が道場なんだよ」
「その拳法も」
「そうなんだよ、あっちの武術ってのは拳だけじゃなくてさ」
「薊ちゃんみたいになのね」
「そうだよ、棒とかもやるんだよ」
そうだというのだ。
「あたしの棒術はお師匠さんから教えてもらったものだけれどな」
「かなり独特よね」
「七節棍だからな」
それで、というのだ。
「三節棍以上にな」
「あまりないものよね」
「ああ、そうだよ」
自分でも言うのだった、確かに薊の七節棍はかなり独特で中国拳法においてもあまりないものだ。そのことは薊自身もわかっているのだ。
「あの棒の使い方はさ」
「難しいわよね」
「慣れないとな」
「やっぱりそうよね」
「最初はかなり苦労したよ」
薊自身もそうだというのだ。
「あちこちぶつけたりな」
「大変だったのね」
「ヌンチャクだってぶつけるんだぜ」
使っている時に己の身体にだ。
「それで七つだからさ」
「もうそれこそ」
「そうなんだよ、最初は身体中痣だらけになって」
「それでどうして使ったの?」
「面白そうだからさ」
それで、と答える薊だった。
「だからなんだよ」
「それでなのね」
「ああ、七節棍の修行続けてな」
「今みたいになったのね」
「そうなんだよ、去年お師匠さんから免許皆伝貰ったよ」
薊は笑いながら裕香に話した。
「やっとって感じでさ」
「免許皆伝って」
「毎日修行したよ」
「その七節棍を」
「拳法全体をさ」
ただ棒を操る修行だけでなく、というのだ。
「去年だったんだよ」
「拳法全体なの」
「大変だったよ、本当に」
「それでそのお師匠さんにこれから」
「行くな」
こう言ったところでだった、そこで。
一行の目の前に古風な散髪屋が出て来た、白いガラスの外装から散髪屋のあの回転する椅子とその前の鏡が見える、そして店の出入り口のところにだ。
青と赤のローラーがある、そして店の名前が書かれた看板もある。その店の前まで来てそうしてだった。
薊は裕香達にだ、明るい笑顔で言った。
「それでここがさ」
「そのお師匠さんのお店ね」
「そうなんだよ」
こう笑顔で言うのだった。
「ここがさ、通称シナトコっていうんだ」
「シナトコ?」
「華僑の人がやってる散髪屋さんだからだよ」
シナとは中国のかつての呼び名だ、戦前の言葉で決して差別用語ではないがそこに差別意識が加われば差別用語になるであろう、そしてトコとは床屋のことであり散髪屋のことである。
「それでこの仇名だったんだ」
「そうなのね」
「元々横浜にいたらしいけ
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