第四十八話 薊の師その三
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「もうカスみたいだな」
「いいことにね」
菫は巨人の弱体化を心から喜んでいた、このことは九人共だ。
「親会社は不祥事続きで大赤字、もう主力選手も出て行って」
「それで弱体化しまくってな」
「それであの有様なのよね」
「ああ、いいことにな」
「やっぱり巨人はね」
「最下位が似合うな」
「物凄くね」
巨人には無様な敗北がよく似合う、戦後日本の歪みは巨人に具現化されていたがその歪みが正されているということか。
「いいことよ」
「全くだよ、ただな」
「ただ?」
「いや、本当に横浜何時優勝するんだよ」
またこう言う薊だった。
「万年Bクラスなんてもう嫌だぜ」
「我慢するしかないわね」
黒蘭も薊にこう言うしかなかった。
「今は」
「耐えて育成か」
「その時期よ」
「そう言って何年だろうな」
「何年かかろうともよ」
「我慢するしかないか」
「ホークスもそうだったわ」
福岡ソフトバンクホークスである、福岡を本拠地とするチームだ。
「南海からダイエーになってかなり時間をかけて」
「それで強くなったからか」
「そう、思考錯誤もしつつ育成していって」
「ドラフトでいい選手も獲得してな」
「やっとだったから」
「西武から秋山さんや工藤さんも獲得してな」
こうした地道な努力の結果だったのだ、ホークスも。
「強くなったからか」
「そう、だから横浜もよ」
「我慢しかないな」
「まあ阪神だったらね」
鈴蘭はこの年も優勝に向けて邁進しているチームの名前を出した。
「伝統的にピッチャーはいいから」
「後は打線だよな」
「補強ポイントがはっきりしてるとね」
「強くなりやすいか」
「そう、そうしたチームはね」
「横浜は全部がな」
それこそ、と言うしかない薊だった。歩きながら難しい顔になっている。
「駄目なんだよな」
「そこまで酷いかしら」
「酷いっていうかぱっとしないか」
「ぱっとなのね」
「ああ、だから万年Bクラスなんだよ」
つまり戦力がないというのだ。
「ピッチャーもバッターもな」
「そういうことなのね」
「そうだよ、だからな」
「余計に辛いっていうのね」
「どうしたものだよ」
心から言う薊だった。
「まあ言ってそれで強くなるのなら」
「それならね」
「そんな楽なことはないよ」
薊はまた鈴蘭に言った。
「世の中そんな甘くないからな」
「野球もね」
「他のこともな」
「そういうものね」
「だよな、後な」
ここでだ、薊は今自分達がいるその路を見てこうも言った。
「もう少しだよ」
「そうなのね」
「学校見えてきたからさ」
フェンスの向こうの校庭を指差しての言葉だ。
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