空白期 中学編 26 「深夜の贈り物」
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に会いたいと言ってきたのだ。無下にするわけにはいかないだろう。
それに普段感情を表に出すことが少ないだけに、もしかすると深刻な悩みがあったのかもしれない。そのことに気づいてやれてなかったとすれば、俺はパートナー失格だ。けれどこうして電話してきたということは頼ってくれているということだ。何かしらの力になってやらなければ本当にパートナー失格になる。
「はぁ……はぁ……」
ろくなウォーミングなしで寒空の下を走ってきたせいか、大した距離を走ったわけでもないのに息が上がってしまった。まあここに来るまで肉離れのような症状は起きなかったこと、何より誰にも会わなかったことは幸福だろう。
公園の中に入り進んでいくと、中央にある小さな噴水のところにひとつの影があった。淡い赤色のマフラーに白いコート、茶色のスカートにブーツとオシャレな格好をしている人物の顔は、俺の知るシュテルのものに間違いない。
いつもならばあちらも俺の存在に気づきそうな距離ではあったのだが、考え事でもしているのかこちらに意識を向けようとはしない。
歩いて近づいていくとようやくこちらに顔を向けてきた。それと同時に俺はある違和感を覚えたが、すぐにその正体に気が付く。
「こんばんわ、急な呼び出しに応じてもらって感謝しています」
「そこまで言われることでもないと思うんだが……眼鏡はどうした?」
「あぁ気にしないでください。今日はなくてもあなたの顔が良く見えますから」
まあ見えるだろうな……いつもより距離を縮めて話してるわけだから。
つまり今のシュテルは普段の距離ならば俺の顔が良く見えてないということになる。何で眼鏡を掛けてこなかったんだと言いたくもなる。が、聞いている話では多少悪いだけとのことなので、眼鏡がなくても問題がないといえばないのだろう。
「それで俺に何の用なんだ?」
「それはですね……あなたにこれを渡したかっただけなんです」
シュテルが差し出してきたのは緑色の紙で綺麗に包装された拳大ほどの何かだった。このへんでは見たことがないものだけに、おそらく彼女が自分で作ったものと思われる。
「ん? 俺、お前に何かしたか?」
「ふふ、やれやれですね。今日が何の日かお忘れですか?」
「今日? 今日は……あ」
今日は2月13日、いやすでに0時を回っているので2月14日だ。この日は世間で言うところのバレンタイン。それを考えると、シュテルが渡そうとしているものはチョコレートということになる。
「チョコレートか?」
「はい。日頃の感謝の気持ちを込めて……受け取ってもらえますか?」
「それはまあ……断る理由もないし」
正直な話、俺は毎年のように異性からチョコレートはもらっている。なのは達からは今シュテルが言ったように日頃の感謝云々
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