空白期 中学編 26 「深夜の贈り物」
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のだが、聞こえてきたシュテルの声には申し訳なさや罪悪感が感じられただけに、ここで本当のことを言うのは悪手だろう。
『そうですか……それはすみませんでした。では良い夢を』
「良い夢をって、何か用事があったから電話してきたんじゃないのか?」
『それはそうですが……私用で掛けただけなので。あと1コールして出なければもういいとも思っていましたし気にしないでください』
0時過ぎに私用で電話してくるような奴じゃないって分かってるだけに逆に気になるんだが。
「私用でも何でもいいからとりあえず言ってみろよ。このままじゃ逆に気になって寝れん」
『……分かりました。……今から会えませんか?』
「は?」
思わず口に出てしまった。でも仕方がないだろう。シュテルは昔のように俺の家に住んでいるわけでもないし、なのは達の家に泊まっているわけでもない。魔法世界に居ると考えると、会うにしてもそれなりの時間が掛かってしまう。
『すみません、このような時間なのに不躾なことを言ってしまって。今のは忘れてください』
「いやだから待てって。今お前どこにいるんだ?」
『それは……』
シュテルの口にした場所は魔法世界ではなく、ここから歩いて10分ほどの場所にある小さな公園だった。カーテンを開けて外を見てみると、夕方まで降っていた雪はすっかり姿を消して月が顔を出している。この明るさならば懐中電灯の類は必要なさそうだ。
「シュテル、今からそっちに行くから待ってろ」
返事がきたのを確認した俺はすかさず電話を切って着替えを始める。
まったく……こんな夜中に電話してくるくらいなら直接ここに来ればいいだろうに。何で風除けもない公園なんかにいるんだ。今はまだ2月なんだぞ。
寒空の下で待っていると考えるだけで急がなければならないという気持ちが溢れてくる。ディアーチェに一言声を掛けようかとも思ったが、先ほどの様子からして今はすでに夢の中だろう。静かに外に出た俺は玄関の鍵を閉めると、シュテルの待つ公園に向かって走り始めた。
「さむ……」
口から出る息は白く、肌に触れる冷気は刺すような刺激を与えてくる。また時間帯が時間帯だけに一部の大人に見つかればややこしいことになるだろう。下手をすれば学校生活に支障が出るかもしれない。
だが今の俺は魔法世界で生きることを決めている。多少学校生活に支障が出たとしても構いはしない。移り住む時期が早まれば友人達には何か言われるかもしれないが、学校よりもシュテルのほうが大切なのだ。
接していて面倒に思えることもあるが、あいつはいつも俺の味方で居てくれた。挫けそうになったときは支えてくれた。間違った道を選ぼうとしたときは本気で怒ってくれた。俺にとってあいつは……大切なパートナーなんだ。
そんな奴が夜中
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