妖魔夜行
[1/5]
[1]次 最後
ルーミアは、夜の闇を彷徨っていた。
月の光が地上を照らし、妖しい輝きは彼女の力を高める。
−−宵闇の妖怪。
それが彼女の属する種族。人の闇を糧に生きる、人食い妖怪。
彼女が生まれて、もう何千年が経っただろう。
彼女は、人が闇を恐れた時、生み出された存在。
人が闇を恐れる限り、彼女が死す事は無い。
だが、それ程までの永い刻を過ごしながら、しかし彼女は幼かった。
その幼さ故に、彼女は過ちを犯す事となる。
人と妖怪は相容れ無い。
妖怪と人は相容れ無い。
当たり前だ。
当たり前の事だ。
−−これは、そんな当たり前の事を思い知らされた、孤独な妖怪のお話。
◇◇◇◇◇◇
ルーミアには、親しい人間が居た。
小さな娘だった。人里に住む貧しい一家の一人娘で、
偶然捕食を終えたばかりで腹の膨れていたルーミアの前に現れた時から、その付き合いは始まったのだ。
名を、御風千夏と言う。
千夏は、ルーミアが妖怪である事を知っても、彼女を拒絶しなかった。
ずっと誰とも関わる事がなく、孤独であったルーミアは、それが心の底から嬉しかったのだ。
だから、彼女だけは食べなかった。
幼い子供のように、かくれんぼや鬼ごっこなどもした。
とても、幸せだった。
「ねぇ、千夏ちゃん」
「なあに?ルーミアちゃん」
ふと、ルーミアは疑問に思った。
自分のような妖怪と遊んでいて、千夏は大丈夫なのだろうか。
周りの大人達に、責められてはいないだろうか。
そんな事を、ルーミアは尋ねた。
「−−ううん、大丈夫。ルーミアちゃんは人を襲ったりしないって、信じてるもん」
そんな、自分を信じてくれた千夏の言葉に、ルーミアはまた心から幸せな気分になる。
千夏は、間違いなく親友だ。
誰が何と言おうと、千夏だけは守ってみせる。
その夜の事だった。
突如、目の前にその妖怪が現れたのは。
「何の用よ」
「つれないわねぇ、昔からの縁じゃないの」
スキマ妖怪−−八雲紫は、胡散臭い笑みを浮かべて笑った。
「妖怪と人間が仲良く、ねぇ。貴女、本気でやってるの?」
「本気って何よ。私があの子と偽りの気持ちで接してるって言うの?」
「そうは言ってないわよ。けど、貴女仮にも古参妖怪でしょう?その末路がどういう物かは知っている筈よ」
「私は、そんな事にはならないわ」
「あら、そう。でも一応昔の馴染みとして、警告しておくわ」
紫は、それまでの不気味な笑みから、厳しい顔つきに変えると、低い声音でルー
[1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ