妖魔夜行
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に消えた。
孤独の中に、一人取り残される。
「……千春ちゃん」
左手で、ルーミアは自らの腰程までに伸びた長い髪を束ねた。
空いている右手で、束ねた髪を切り落とす。
毛はバサリと落ち、髪は肩に届く程度に短くなった。首を覆っていた髪が無くなった事で、吹くそよ風が心地良い。
ルーミアは切り落とした髪を拾い上げると、その細胞一つ一つを闇へと変換した。
闇は形を変え、一つの物質を再現する。
−−彼岸花。
たった一つ、覚えていたその花は、皮肉にも死を表す花だった。
もっとも、そんな事を今のルーミアが知っている筈も、考えている筈も無いが。
地に置いた千切れた足に、掻き集めた土を被せ、石を乗せる。
その前に、彼岸花を供えた。
爪を伸ばし、石に昔何度か見た文字から、千春の字を思い出し、文字を刻み込む。
『御風千春之墓』
ゆっくりと、立ち上がる。
−−自分が、間違っていた。
−−人と仲良くなんてこと、不可能だった。
−−分かっていた筈なのに。
「どうして、こうなっちゃうんだろうなぁ……」
ルーミアは、闇へと溶けた。
寸前に落ちた雫が、血か涙かは、誰にも分からなかった。
「お前が、宵闇の妖怪か?」
紅白の巫女服を着た、長身の女性が、ルーミアを見下ろした。
「……ええ、そうよ」
「貴女は人里の決まりを破り、人を捕食した。間違い無いな?」
「……ええ」
「……後悔しているのか?」
「……ええ。そうね」
「そうか。……ならせめて、今直ぐにでも退治してやろう」
巫女が、お札を取り出した。いや、お札と言うのだろうか。
赤い、布のような物だった。見たところ、直接糸に術式が編み込まれている。
「これで、貴女を封印する。苦しみは無い。暫く休むといい」
結界が広がる。
体が押さえ込まれる。
札が、ルーミアに迫った。
先程の巫女の言葉を思い出す。
−−後悔しているのか?
その時、ルーミアは無意識で肯定した。
−−今、自分は後悔していたのか。
「……そーなのかー」
意識していなかった自分の気持ちに納得しながら、ルーミアの−−『宵闇の妖怪』の意識は閉ざされた。
かくして、
宵闇の力は閉ざされ、記憶も閉ざされ、生きた証を閉ざされ。
夜を行く妖魔は、眠りに就いた。
これは、ルーミアがリボンの封印を受ける事となった事件の話。
−−そして。
とても悲しい、妖怪の
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