10部分:第十章
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がようやく来た様に喜んだ。そしてそこに留まり何が起こるか見届けることにした。
「用を足すのはそれからでいいな」
仏壇が開くと次には障子が開いた。そしてそこから香炉が飛んで来た。居間にあるものだ。
それはひとりでに飛んでいた。ゆらゆらとまるで人魂の様に飛ぶ。そして仏壇の中に入った。小さな香炉だったので何事もなく入った。
香炉が入ると仏壇はひとりでに閉じた。そしてそのまま開かなくなった。
障子も閉じられた。それで終わりであった。
「今度は香炉か、ふむ」
彼はそれを最後まで見守って納得したように頷いた。
「毎日毎日趣向を変えてくれて有り難いのう。それにしても」
彼はここであることに気付いた。
「化け物というのは物を動かすことが好きじゃな。これは面白い発見じゃ」
そう言うと笑いながら厠に入った。そして用を足すと手を荒い休んだ。
十五日にはまた大勢の掛け声が聞こえて来た。
「心地良いのう」
前にもあった怪異なのでそれが気にはなったが好きな声なので聞いていた。気分よく聞いているとまたもや障子がひとりでに開いた。
そして香の物桶がゆらゆらと飛んできた。それが部屋の真ん中に置かれると障子は閉まった。
「気がきくのう。よい香りじゃ」
平太郎はそれは化け物の気配りだと感じた。
「化け物も親切なものじゃ。では今宵は心ゆくまで飲むとしよう」
その日は気分よく朝まで飲んだ。掛け声を聞き、香りを楽しみながら飲んだ。
十六日は仰向けになって寝転がっていた。すると天井が急に迫って来た。
「こんな天井だったかのう」
それは彼の鼻先で止まった。それきり動かなくなった。
「ふむ」
落ち着いて見る。どうやら寝返り程度はできそうな間だ。
「ならよい。では久方ぶりに寝て寝ることにするか。これでは化け物も来れまいし」
そして寝た。起きてみると天井は元に戻っていた。
次の日には何処からか見たこともない男がやって来ていた。
「どなた様でしょうか」
聞いて見ると上田次郎右衛門という。何でも隣の国の者だという。
「拙者剣を教えている者でござる」
同業者であるようだ。そういえば聞いたことのある名だ。
「その他にも実は化け物退治も生業にしております」
「化け物退治をですか」
「はい。主に狐狸を相手にしております」
「成程」
ことの真実はわからないがどうやらそれなりに自信があるようだ。口調でそれはわかった。
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