○○ニ 二人の鎮守府
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提督が倒れ、取り敢えずとバケツにタオルと水を用意し、提督の額に水を絞ったタオルを置いて暫し様子を伺う。
この司令室にはデスクの他何もない。つまり提督を寝かせる布団もないのだ... 鎮守府に幾つもある他の部屋にならある。だが、生憎布団を司令室まで運べる力など電は持ち合わせていなかった。故に、提督は木の床に横になっている。バケツとタオルは入渠室から持ってきた物だ、別に持ってきたって誰も怒らないし困らない。何故ならこの鎮守府には電と倒れた提督しか居ないのだから。
水の入ったバケツを提督の横に置き、デスクの上の書類を持ってまた提督の隣に座った。秘書艦としての役目を果たすため、書類整理も欠かしてはならない、だが一に自分を使ってくれる者の管理はなお大切なのだ。電は書類を片手に提督を見た。
こんな調子で大丈夫なのでしょうか。
心配にも考えながら提督の言っていたことを思い出す電。私のことを電だとわかると細かいことまで言っていた、つまり私のことは知っていた。でも、私が電だと言うことに驚いていた、どう言うことだろう。それに、自分が司令官だと言うことにさえ驚いていた。
益々意図が掴めなくなり、このままでは自分も提督のように倒れてしまう、そう思った電は胸ポケットに閉まっていた赤い眼鏡を取り出し、スチャっとかける。
「お仕事なのです」
そう言って書類を捲り始めた。
■■■
カチッカチッ と時計の音だけが耳に響く部屋の中、提督はゆっくり瞼を開けた。額に何か感触があったのか、手を当てる。そして掴んだ濡れタオルを見て少し頬が緩んだ。
あの娘がやってくれたのか。
目覚めて数秒は何があったのか忘れていたが、濡れタオルを見て全て思い出したらしい。
ん? そう言えばあの娘...電は何処に行ったんだ?
提督は不思議になり、起き上がろうとしたときだった。身体が重い、自由が効かない、胸ぐらを掴まれている...
「...なの〜ですぅ〜」
スーピースーピーと寝息を発てて電が寝ていた。
そう、提督の自由を奪っていたのは電。腹部に顔を乗せ、提督のコートをギュッと掴んでいるのだ。少し緩んでいた頬がまた一段緩み、微笑みを抑えられなくなった提督は、
「お疲れ様。ありがとう」
そう言ってそっとコートを脱ぎ、電が掴んでいる部分を主とし、被せた。隣に書類が見えたので、それを電が片付けていたと言うことがわかったのだ、秘書艦としての仕事なのだろう。もう一度。気持ち良さそうに寝ている電の顔を見て、お疲れ様、そう思いかけ、書類をデスクに置いた。
さて、秘書が寝てしまった今、自分が何をすべきなのかわからない。ちょっと鎮守府内を散歩してくるか。
提督はそう考え、タオルとバケツを持って部屋を出た。近くにあった流しに水を捨てる。タオルをバケツに
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