五十六話:覇を奪いし者
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「『覇龍』……どうやら不完全のようだな」
どういうわけか不完全なためにドラゴンの形を取りながらも宝玉から滅茶苦茶に腕やら翼やらの生えた怪物の姿になったイッセーを眺めながらヴィクトルが呟く。声そのものは冷静そのものではあるが、流石のヴィクトルも完全に異形と化した姿には畏れを抱いていた。
「グギュルウウウウウッ!」
「あれが……イッセー君だっていうのかい?」
祐斗が茫然とした声を出すのも聞こえないほどに正気が保てていないイッセーが天まで轟く様な咆哮を上げたかと思うと、その口から出鱈目な方向に紅蓮の光線を吐き出す。大地を紅蓮の光線が過ぎ去ったかと思うと次の瞬間には、全てが赤い爆炎に飲み込まれて跡形もなく消え去っていた。その余りにも桁違いな力に味方であるリアス達でさえ恐怖を抱かずにはいられなかった。
一方のヴィクトルは、恐怖こそはしなかったものの瞬時にまともに戦うべき相手ではないと判断して覇龍状態のイッセーから距離を取る。恐らく今の威力を持った一撃を食らえば肉片すら残さずに自分は消し飛んでしまうだろうと考えながら。
「ガアアァァァッ! ヴィクトルゥゥゥウウウッ!!」
邪念の籠った雄叫びを上げ、ヴィクトルに向けて異形の体を異常とも言えるスピードで進ませ、宝玉から生えた無数のドラゴンの腕で叩き潰そうとしてくるイッセー。ヴィクトルは骸殻を足だけに部分開放して瞬時に速度を上げて間一髪のところでその腕を避ける。
そして、先程まで自分が立っていた場所を振り返って見てみると地面が砕け散り、巨大なクレーターが生まれ、まるで隕石が落ちたかのような風景に様変わりしていた。しかも、まだ余力を残している様に見えるのだから恐ろしい。
「流石は二天龍と言ったところか……神から覇を奪ったと吠えるだけはある」
「グギャアァァッ! アー…シアァァァッ!!」
「まだ完全に正気を失ったわけではないのか……だとすると少々厄介だな」
改めて二天龍というドラゴンの恐ろしさを感じるヴィクトルの元に、まるで失った事に苦しむように歪んだ首を天に持ち上げて泣き叫ぶ声が聞こえてくる。その声にヴィクトルは異形になったイッセーに幾分かの意識を感じ取り、眉をひそめる。もし完全に意識を失っているのであればその強大過ぎる力を振り回すだけなので怖いことは無かったのだが、理性を持ってあの赤い暴力が振るわれるのであれば話は別だ。
コントロール出来ない状態なら適度に距離を保ちながら戦い、徐々に体力を削るつもりだったが、コントロールされるとまっとう戦わなければならなくなる可能性が出てくる。流石にフル骸殻は使わなければ真正面から対抗するのも難しいだろうなと考えている所にイッセーの獰猛な目がヴィクトルへと向い
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