五十六話:覇を奪いし者
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クトルにつけられた傷が治ったリアス達ではあるが、体力まではそうもいかない。人体という物は重傷を負えば全ての体力を自己治癒に回して死ぬのを防ごうとするのが常だ。
そこに先程までの戦いでの疲労も加わり、『覇龍』の反動でしばらく動けそうもないイッセーは言うまでもなくリアス達もまともに戦える状態ではない。
全員の回復をしたアーシアですら気丈に振る舞ってはいるものの先程の行為でほぼ全ての力を使い切ってしまい玉のような汗を流しているのだ。相も変わらず絶望的な状況にリアス達の顔が苦痛で歪み、ヴィクトルの顔が愉悦で歪む。その時―――白銀の魔力弾がヴィクトルに降り注いだ。
「赤がダメなら白がお相手をしてあげるわ」
「貴様はっ! 白龍皇!!」
悠然と見下ろすように空の上から現れたのは白銀の鎧を身に纏ったヴァーリだった。さらには、その隣には美候とアーサーとルフェイ、さらには黒歌が強い意志を宿した目で彼を見つめながら浮いていた。ヴィクトルは咄嗟に魔力弾を防ぎながら苦々しげに叫ぶ。そして、最後にそんなヴィクトルに迫りゆく銀色の影が一つ―――
「うおおおっ!」
「何! その動きは!?」
その影は雄叫びを上げて飛び込みながら回し蹴りを繰り出し、驚愕するヴィクトルを吹き飛ばす。影は反動をつけたまま、間髪を置かずに吹き飛ばした彼の元に詰め寄り重い蹴りと、ナックルを装備した鋭い拳での荒々しいラッシュをお見舞いする。
そして、今度は素早く背後に回り込んだかと思うと舞うように美しいラッシュを決めていく。最後にふらついた相手を確実に殺すべく、身体中の闘気を右腕の拳に一点集中させてミサイルのように突進しながら渾身のストレートを彼の腹部に突き刺す。
「砕け! 殺劇舞荒拳ッ!!」
「ぐあああっ!?」
大型ダンプカーにでも轢かれたかのような衝撃を受けて飛んでいきながらも最低限の受け身を取るヴィクトルに内心舌を巻きながら影はかつて親友がやっていたように拳を握りしめ、目を細めて敵が起き上がるのを待つ。
「くっくっく……懐かしい技を使ってくる」
少しよろめきながらも妙に楽しそうな笑い声を上げて、立ち上がるヴィクトル。そんなヴィクトルを影が黙って見つめていると、その隣に黒歌達が降り立ち、戦闘態勢を取り始める。銀色の影は黒歌と一度見つめ合い、頷いてからヴィクトルに力強い言葉で宣言する。
「俺はお前が持っていない物でお前を倒す。それが俺とお前が違うという何よりの証拠になるから!」
「いいや、同じだ。“俺”とお前は何一つ変わらないのさ―――ルドガーッ!!」
――現在と過去が今、交錯する――
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