五十六話:覇を奪いし者
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貫かれてもなお、回復することが出来たのである。
さらに、アーシアのイッセーを癒したいという強い意志により癒しの力も格段に向上しており、邪念すら癒すことが可能になったのだ。アーシアは新たに得た力でイッセーを悲しみと憎しみの中から救い出すべく、その神々しさに目を奪われて動くことのできないヴィクトルの分も含めて祈りを捧げはじめる。
「めでたし 聖寵満ち満てるマリア、主御身と共にまします。御身は女のうちにて祝せられ、ご胎内の御子イエズスも祝せられたもう。天主の御母聖マリア、罪人なる我らのために、今も臨終のときも祈り給え。そして、願わくば慈悲深き心にて傷つきし我ら全てに癒しの雨を降らせ給え……アーメン」
祈りが告げられると共にアーシアの手の中にあるロザリオから黄金の光が放たれて天に昇っていく。そして、すぐに空に広がりこの場に居る傷ついた者全てに光の雨となり降り注いでくる。ヴィクトルはそれを敵の攻撃だと思い避けようとするが光の雨を浴びた左肩から見る見るうちに傷が消えていくのを見て驚いて避けるのを止める。彼はそこで握っていた剣を降ろしながら思う。彼女は、アーシア・アルジェントは優し過ぎる程に優しいと。
『癒しの雨』
「グギュルゥゥゥ………あ、ああ……俺は……」
「……イッセー先輩が元に戻っていきます」
小猫の言葉の通りに光の雨を浴びた部分からイッセーの鎧が崩れていき、生身の体が出てくる。同時に少しずつ意識が戻っていき獣の様な声から人としての声に変わっていく。そして、完全に人の姿に戻り最後に虚ろだった目に意識が戻りアーシアの胸の中に倒れこむ。彼女はまるで母親が子供を抱き止めるように優しく彼を抱きしめる。
「ごめん……アーシア。俺、おかしくなってた」
「違いますよ、イッセーさん」
弱々しい声で俯きながら謝るイッセーにアーシアは首を横に振って否定の意思を示す。疑問に思ったイッセーが顔を上げて見てみると花の咲くような笑顔がそこにあった。
「こういう時は『ありがとう』って言うんですよ」
「……そうだな。ありがとう……アーシア」
弱々しいながらもしっかりとした声で礼を言い、笑顔を見せるイッセー。そんな姿にアーシアだけでなく、リアス達もホッとして笑顔を浮かべる。だが、問題は全てが解決したわけではない。いや、振り出しに戻されたと言ってもいいだろう。倒すべき敵はまだ立っているのだから。
「まさか、覇龍まで癒してしまうとはな……素直に感嘆するよ。だが、同時にお前達は私に対する対抗手段を失った。赤龍帝も動けない今、どうするつもりだ?」
再び剣を構えたヴィクトルが諦めろとばかりに告げる。実際問題、アーシアの力でヴィ
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