五十六話:覇を奪いし者
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上げられ、見る者からすれば、まるで空そのものが血を流しているかのように見えた。
恐らく、今の攻撃が大地に放たれていたら辺り一帯は塵すら残らずに消し飛び自然環境すら変えてしまっていただろう。だが、大地には撃たれなかった。少女―――アーシアの声に反応した僅かに残ったイッセーの心により。
「アーシアァァ……?」
「はい……イッセーさん」
「バカな、確実に心臓を貫いたはずだ! 一体、どうやって?」
優しさと悲しみを瞳に籠めたアーシアがしっかりと自分の足で大地を歩いて、動きを止めたイッセーの元に近づいて行く。ヴィクトルは確実に仕留めたと思っていた人物がこうして生きて、尚且つ傷が塞がった状態で立っていることに驚愕の表情を隠せなかった。
リアス達もアーシアが生きていることに喜ぶと共に驚いている。そんな彼等を尻目にアーシアはいつの間にか首にかけられていた黄昏色のロザリオを祈るように掲げる。するとロザリオから神々しい程の光が放たれイッセーの目をあっという間に癒してしまう。
「ホン…トウニ……アーシアダ」
「私はここに居ます。だから……もう私の為にイッセーさんが苦しまないでください!」
「あのロザリオは…ッ! そうか、あれは禁手か!」
光を取り戻した為か、癒しのオーラを浴びた為か、少し正気を取り戻したイッセーは涙を流しながら必死に自分に語りかけるアーシアを見つめる。一方のヴィクトルはアーシアの力の正体に思い当たったために失敗したとばかりに歯噛みする。
死に瀕したおかげか、もしくは変わり果てたイッセーを救うために至ったのかは分からないが間違いなく禁手の能力でアーシアは瀕死の淵から蘇ることが出来たのだろう。しかも、以前よりも遥かに強力な癒しの力を持って。
「アーシア……」
「ダメだ、イッセー君! 今の君がアーシアさんに触れたら…て、え?」
触れるだけで相手を容易く引き裂いてしまう爪のついた手でアーシアの頬に手を伸ばすイッセーに祐斗が警告の言葉を飛ばすがイッセーの耳には届かずに案の定、アーシアの頬は裂けて血が流れ出す―――が、美しい光が傷口を覆ったかと思うとあっという間にその傷は塞がってしまう。祐斗だけでなく朱乃も呆気にとられてマヌケな声を上げる。
「私の新しい神器の名前は『慈悲深き聖母マリアの加護』です。マリア様が私に加護を与えてくださります」
『慈悲深き聖母マリアの加護』の能力は使用者に絶対の加護を、つまりは体力が続く限り常に癒しの力を働かせ癒すことである。この能力のおかげでアーシアはヴィクトルに心臓を
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