五十六話:覇を奪いし者
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「私はここから逃げてルドガーの方に行かせてもらおう」
「っ! ……私達を…放置しても…いいのかしら?」
「ふむ、確かにここで始末した方が後々の為にもいいだろうが……私が手を出すまでもない―――赤龍帝! 私はここにいる!」
「グギュアアアァァァッ!」
ヴィクトルの声に反応したイッセーが盲目になった眼に光の代わりに憎悪をたぎらせて声のする方向を睨みつけて来る。そして、ガコン、という音と共に鎧が変形していき胸の部分にポッカリと穴が空き発射口となる。
『Boost』
一度、静かに倍加を告げる音声が鳴ったかと思うとそこからはもはや数えるのも嫌になるほどの量と速さの倍加の音声が辺り一面に響き渡り。発射口は赤く輝き、馬鹿げた量の血のように赤いオーラを迸らせていった。……その先に身動きが出来ない、愛する者達がいるとも知らずに。
「ヴィクトル…っ! あなた…まさか!?」
「ふふふふふ……彼にも私と同じ絶望を味わってもらいたくてね。愛する者を―――その手で殺すというね」
「ふざけ…ないでっ! ……イッセー! やめて…あなたが傷つくわ!」
狂気の籠った笑い声を上げながら、ヴィクトルは真の絶望を知らない青二才にこの世で最も残酷な行為を行わせて自分と同じ絶望の淵に落とすと宣言すると、自身はその場から素早く立ち去り、その光景がよく見える場所に移動する。彼は青臭い希望を語るイッセーが許せなかった。
何の苦しみも知らずに全てを救うと妄言を吐く彼を自分と同じ目にしてやりたかった。世界のすべてに希望を見出せなくなり、過去にすがるしか出来なくなった、生きながらにして死んでいる人間の目に。リアスはそんな残酷なことは絶対にさせまいと、なけなしの力を振り絞って必死にイッセーに呼びかけるが正気を殆ど失い、尚且つ光を失った彼には届かない。
『Longinus―――』
胸についた発射口に宿るオーラが一点に集中され、遂に全てに幕を引く時を迎えた。覇に堕ちたドラゴンは全てを消し去る紅蓮の波動を撃ち出す為に空間を引き裂くように怒りの咆哮を上げる。その先には目的の人物は既におらず、相手の罠に嵌っているとも気づかぬままに。そして、一瞬だけ辺りに赤い閃光が煌めき、遂に放たれようとした―――その時だった。
「止めてください―――イッセーさん!」
聞こえるはずのない誰よりも優しい少女の声が聞こえたのは。
『―――Smasher!!』
放たれた紅蓮の波動はリアス達から僅かに軌道を上へとずらして天へと射ち上がって行き、爆散する。その威力は常軌を逸しており、爆風が大気を揺るがし、反動で高い建物や柱は容赦なくなぎ倒され砕け散る。さらには、空は大気に残留した赤い魔力光で染め
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