1部分:第一章
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でおり肌も白く美男子であると言ってよかった。彼の名はロキという。巨人族の血を引きながらも神々に属しており技術や悪戯といったものを司っている。神々でも屈指の知恵者と言われている。
そのロキが話の一部始終を見ていたのだ。だが彼はここですぐにトールにこのことを知らせはしなかった。まずは本来の姿に戻ったうえでゆっくりとヴァルホルに戻りだしたのだ。
「急ぐとかえって面白くない」
楽しげに笑いながらの言葉だった。
「それよりもこのまま待っていれば」
その笑みに何処か邪悪なものさえ漂わせてきた。
「トールの奴がどれだけ怒るか見ものだ。わしが動くのはそれからでいいな」
こう考えつつヴァルホルにあえてゆっくりと戻るのだった。果たしてロキがヴァルホルに戻ると。トールがヴァルホル中をえらい勢いで走り回っていた。
「ないぞ、ないぞ」
神々の屋敷という屋敷、ヴァルホルにある河という河、穴という穴を覗いて必死に探し回っている。大柄なのにその動きはかなり素早いものだ。
「何処にもない。何処にあるのだ」
「おいおいトール」
ロキはさりげなくを装ってトールに声をかける。内心は笑顔だったが表では神妙な気遣う顔だ。
「一体どうしたんだい?そんなに焦って」
「これが焦らずにいられるか」
トールはそのロキに顔を向けて厳しい顔を顰めさせて言ってきた。
「俺のミョッルニルがなくなったのだ」
「ミョッルニルをかい?あんたまた飲み食いしている時に一緒に飲み込んだんじゃないのかい?」
トールは大食漢であり大酒飲みである。それをからかっているのだ。
「馬鹿を言え。幾ら俺でもミョッルニルは食わんぞ」
「それもそうだな。しかしじゃあ一体何処に」
「それがわからんから探しているのだ」
厳しい顔でまたロキに述べる。
「果たして何処にあるのか。俺のミョッルニル」
「ああ、そういえばだ」
ここでロキは芝居の第二段階に入ることにした。
「ちょっと小耳に挟んだんだがな」
「んっ!?何だ」
身を乗り出してそのうえ耳を近付けてきた。手を耳に当ててさえいる。
「ミョッルニルに関する話か?」
「巨人族の王でスリムっていうのがいるだろ」
「あの狡賢い男か」
トールはスリムの名を聞いてすぐにこう答えた。
「知っているぞ。次にミョッルニルの餌食にしてやろうと思っていた」
「じゃあ多分そいつだな。そのスリムは随分といい鎚を手に入れたそうでな」
「鎚か」
「持つところが小さくて誰にも操ることはできないがそれでもとびきり硬いらしい」
「間違いないぞ」
トールはそこまで聞いて思わず声をあげた。
「そいつだ、間違いない」
「そうだな。ではスリムのところを調べてみるとしよう」
既に全部わかっていたがここでも芝居をするロキであった。
「わしが
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