第四話
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人だとバレれば、恐らくは皆殺しにするだろう。そうさせぬためには、梓に耐えてもらうしかなかったのだ。
「昨日、雇っていた探偵から知らせが届き、お前の悪事を暴く証拠が入っていたのだよ。これで…やっと梓を解放してやれる。」
そう言うや、洋介は藤子を一瞥してその場から立ち去った。
当の藤子は何も言えぬまま、茫然としてその場へとへたり込んだのだった。
もう一人立ち上がっていたのは、静江である。
「敬一郎、男だったら観念おし!」
「母さん!息子のことを信用出来ないのか!」
「出来ないよ!私がお前のしたことを知らなかったとでも思うのかい!この戯け!」
そう怒鳴られた敬一郎はビクッと体を強張らせ、そのまま何も言い返せなかった。
そんな敬一郎を庇う様に、横から藤一郎が口を挟んだ。
「静江、あんなものに惑わされるな。息子の幸せを考えれば…」
「それでは、直ぐにでも離縁させて頂きます。目が節穴な人と添い遂げるつもりは御座いませんので。」
静江はそう冷たく言い切ると、藤一郎に視線も向けずにその場より立ち去った。
それには藤一郎も蒼冷め、慌てて藤子の後を追い掛けたのだった。
その場にはもう、藤子も敬一郎にも見方になってくれる者はいなくなった。それどころか、大半は二人へと白い目を向けている。後の大半は、自らの罪をどう帳消しにするか思案してる風である。
「さて皆様、これはなかなかの喜劇に御座いますが、これより今宵のメインを御覧頂きましょう!」
天河がざわめく来客達にそう言うや、辺りは暗闇に閉ざされた。今度は壇上にも光はなかった。
客は余りのことにどうしてよいか分からずにいたが、不意に蒼白い焔が広がって辺りを照らし出した。
見れば、その中心には金の髪を靡かせ、シックなスーツに身を包んだ男が立っていた。
「お初にお目にかかります。私の名はミヒャエル・クリストフ・ロレ。貴殿方は私のことをこう呼んでいるのでしょう?“願叶師"…と。」
ロレがそう挨拶するや、辺りは蜂の巣を突いた様な騒ぎとなった。
ある者は命乞いをし、ある者は逃げ出そうと戸口に殺到し、またある者は自分がどれだけ良い人間かを並べ立てている。
「やれやれ…。そんなに罪を償うのが嫌なのかねぇ…メフィスト。」
「まぁな。そんでも、ああいう奴等はほっといても自滅すんだろ?」
「それもそうか。」
二人は逃げ惑う者等を嘲る様に見たが、その中にあっても二人を直視し続ける者達があった。
それは…木下夫妻と修、そしてアキと梓であった。
「あ…あの御方が…。」
アキはふと立ち上がり、ロレへと手を合わせて祈る様に言った。
「どうか梓を幸せにしてやって下され!わしに渡せるものがあるなら、何でも差し出しますけぇ!」
「お婆ちゃん!」
突然のアキの言葉に、梓は蒼くなっ
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