第四話
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のか!」
「分かっていますよ?」
老人に振り返り、天河は笑ってそう返す。
天河は老人と向き合うためにタクトを置いたが、どういうわけか演奏が止むことはなかった。まるで何かに操られているかの様に、楽員達は皆一様に無表情で演奏を続けている。
それは何処と無く不気味であり、聴衆はどうしたのかとざわめき出した。
「貴方、先日そこに座る櫻井氏より賄賂を受け取りましたね?」
天河の声は音を無視して正確に届く。しかし、言われた老人はそこには気付かず、ただただ目を丸くした。
「き…君、一体何を…」
「天下の二ノ宮教授が賄賂とはねぇ。」
畳み掛ける様に言う天河に、老人…二ノ宮は顔を真っ赤にして叫んだ。
「何を言うか、この小童が!儂があの様な輩から賄賂なぞ…」
二ノ宮が全て言い切らぬうち、天井にふと何かの映像が映し出された。
急に上が明るくなったために皆が一斉に天井を見上げると、そこには櫻井が二ノ宮へと札束を渡している場面がはっきりと映っていた。
「…なっ…!」
だが映像はそれだけに留まらず、天井のあちらこちらへ次々に別の映像が映し出されていく。
映像にはここに招かれた有力者などが映っており、そのどれもが知られれば破滅しかねないものばかりであった。
「こ…これは違う!」
「何者かの陰謀だ!早く止めろ!」
「名誉毀損で訴えてやるからな!」
そうした罵声が飛び交う中、不意に全ての映像が変わった。次に映し出されたのは…。
「…っ!?」
その映像が映し出され時、末席の二人が真っ青な顔をして立ち上がった。
その二人とは…藤子と敬一郎であった。
藤子は様々な男との情事や賄賂を渡す姿が…敬一郎は藤子との情事や修への再三に渡る嫌がらせなどが映し出されている。
「デタラメよ!あなた、早くこんなもの止めさせてちょうだい!」
「有り得ない!私はこんなことは一切していない!」
二人は力一杯叫ぶ。だがそれに対し、二人の人物が対応して立ち上がった。
「藤子、お前が何をやって来たかは知っていた。これで離縁出来ようと言うものだ。」
「あなた…何を言って…」
「お前は私の財が目当てなのだろ?それで…花江を殺したのだろ?」
藤子は目を見開いて言い返す。
「何を言ってるのか分かってますの!?」
「あぁ。あれを見ればな。」
洋介はそう言って天井を指差す。そこには、藤子が家政婦に成り済まして松山家へ入り、前妻の花江の食事へ何かを入れている姿があった。
実は、洋介は密かに藤子を調査させていた。
最初は気付かずにいたが、藤子のとある仕草で分かったのだ。それは首を斜めに傾ける癖であった。
では、なぜ娘の梓を放置したのか?それは世間体のためでも義理のためでもなく、命のためであった。無論、梓の…である。
藤子は自分が犯
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