第四話
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その日の夕刻。
演奏会を間近に控え、天河とグスターヴは学生達の間で右往左往していた。
「おい、もうすぐ時間になるから、皆は舞台脇に列を作って控えていろ。」
天河はそう言うや、直ぐにグスターヴの所へと行く。
「グスターヴ、根回しは?」
「大丈夫だって。全員来なけりゃならねぇ様にしてあるさ。町の有力者も粗方呼んだしな。」
グスターヴがそう言ってヤンチャ坊主がするような悪い笑みを見せると、天河もニッと笑い返して言った。
「さぞ面白いショーになるだろうね。」
ここは大学にある音楽堂だ。コンサートホール…とまではいかない前時代的な建物だが、戦後に改築がなされており、かなり良い響きを得られていた。
その音楽堂に今、多くの人々が詰め掛け、音楽の始まりを今か今かと待っていた。
「ったく…あたしが何でこんな人混みの中に…。」
そう嫌そうにぼやいたのは、めかし込んで派手な着物を纏った藤子であった。その隣には、対照的に地味な格好をした亭主の洋介が無表情で座っている。
「ちょいと、あなた。この中から梓を見付けて、さっさと萩野家へ送んないと…」
「そう急ぐこともあるまい。ここは末席…梓を確実に見付けるのであれば、ここが最適ではないか。出口は私らの左右にしかないのだから心配するな。」
そう返す洋介に、藤子は些か苛立って言った。
「そんな呑気なことを言わないでちょうだいな。あの子は金の卵なの。とっとと萩野の子を孕んでもらわないと。」
「藤子、ここでその話しはするな。ここの大学の多くの方が顧客なんだからな。」
「分かってるわよ!」
そう強く返すと、藤子は嫌々ながらも正面に向き直った。
その二人から五列ほど前には、話しに出ていた萩野夫妻がいた。
「静江…こんなものを見物しに来ていて良いのか?」
「良いではありませんの?」
「しかしだな…今日は松山の娘が…」
藤一郎がそこまで言いかけると、静江は冷たい視線を彼に浴びせて返した。
「それはこの演奏会の後の話しですわ。少しは静かにお出来になりませんの?」
「…。」
そう静江に窘められ、藤一郎は些か項垂れて口を閉ざした。
息子の敬一郎はと言えば、松山夫妻の座る末席に控えており、その目は梓を探してキョロキョロしていた。
末席から十四列離れた場所には、早々に来ていた木下家の人々、そしてその横には、こっそりと来ていた梓とアキも席に着いていた。無論、この混雑では見付かることもない。
「栄吉さんや、わしがこんなとこへ来て良かったんなのぅ…。」
アキが栄吉…修の父へと心配になって問い掛けた。
「アキさん、たまには良いじゃないですか。」
「そうですよ。いつもあれこれと大変なんですから、たまにはこうした珍しい催し事を見るのも良いではありませんか。」
栄吉の言葉に
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