第四話
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翌朝早くから、天河のところへと来客があった。
「お早う御座います。」
「あ、トシさん。お早う御座います。どうかされましたか?」
「先生に御客様ですよ。」
「…?こんな早くから?」
時は六時半を回ったところで、天河らは朝食を終えたばかりであった。
二人はこれから大学へ向かう支度をしようとしていたが、来客と聞いて目を丸くした。
「一体どなたです?」
「先日もお越しになられておりました青年ですが。」
「は?修君?」
天河は些か首を傾げてグスターヴを見たが、グスターヴは半眼になって天河を見ていた。
「時雨…面倒なのが来たらしいな。」
「ま、そうだな…。トシさん、通して下さい。」
「分かりました。」
トシはそう言って襖を閉めて呼びに行くと、直ぐに彼は二人のところへとやって来た。
襖を開いて入って来た彼は、二人がギョッとする程に蒼冷め、最初は何か病にでも罹ったのかと思った。
「お前、どうしたんだ?」
そんな修に、グスターヴは顔を顰めて問い掛けた。しかし、彼から出た次の言葉に、この青年が蒼くなっている理由が分かった。
「先生!今日、梓ちゃんが萩野の家へ泊まるって…。断れば家から追い出すと言われているって…!」
彼は今にも絶望して泣き出しそうだったが、二人にしてみれば予定の範囲内。とは言え、彼にとっては人生を揺るがす一大事であり、ここへ来たのも頷けると言うものだ。
「修君、それならば心配せずとも良い。」
「…?」
天河の言葉に、修は不思議そうに首を傾げて返した。
「先生…どういうことですか?」
「あのねぇ…実は昨日、萩野家へ行ってきたんだ。」
そう天河が返すと、今度は彼が目を丸くした。
「では…」
「いや、藤一郎氏とは話にならなかったんだ。その代わり、静江夫人と話すことが出来た。君、夫人とは遠縁だそうじゃないか。」
苦笑しつつ天河がそう言うと、修は申し訳なさそうに返した。
「はい…。ですが、静江叔母様に迷惑を掛けられませんし、それに…叔母様は敬一郎の母親なんですから…。」
まぁ、尤もな話と言える。まさか恋仇の母親に相談…と言う訳にはいかない。子供の喧嘩じゃあるまいに、こればかりは仕方無いと言えよう。
そんな彼に、天河は溜め息を洩らした。
「しかし、静江夫人は君のことをとても案じていたよ。」
「そう…ですか…。」
そう言って俯く修に、今度はグスターヴが多少苛つきながら言った。
「お前さぁ…もちっとシャキッと出来ねぇのか?」
「そう…言われましても…。」
「そうじゃなくて!…ったく、なんか腹立つ…!」
グスターヴは頭を掻いてどうしたものかと思案している風である。グスターヴが相手に気を使うなど滅多にないため、天河は些か驚いていた。ま、端から見れば、さして気を使っている
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