第四話
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彼を家へと返した。二人が彼を見送った時、彼は来たときとは打って変わり、そこから不安を感じさせるものは何もなかった。
「グスターヴ…君は疾うに解っていたんじゃないのかい?」
「ん?」
「ん?じゃない。彼が全てを棄てても梓ちゃんと一緒になりたいと願っていたことだよ。」
「あぁ…まぁな。でなけりゃ、奴には万に一つの勝ち目もねぇしな。」
実にあっけらかんと返すグスターヴに、天河は苦笑いをしつつ小さな溜め息を吐いた。
言ってしまえば、二人は修の願いだけを叶えれば簡潔に事を処理出来たのだが、肝心の彼自身がそれを望んではいなかった。修は出来る限り自分の力で成し遂げたかったのだ。
少なくとも、神仏などの人外の力に頼ろうなどとは微塵も考えていなかった。無論、悪魔の力もそうなのだ。
そのため、二人はやむを得ず遠回りする外なかった。だが今回、天河はかなり遠回りしている気がした。
「グスターヴ…私達は、一体どうすれば良かったのかな…。」
「今更何言って…」
そうグスターヴが返そうとした時、突然玄関から怒声が響き、大家の制止を降りきって二人の部屋へとやって来る者があった。
「天河!」
襖を一気に開いて大声を上げた人物…それは藤子であった。
「何ですか…はしたない。」 天河はあからさまに顔を顰めた。隣のグスターヴも同様で、こちらはもっとあからさまだ。
「何がはしたないだ!この盗人が!」
「は?」
藤子の言葉に、二人は意味が分からず首を傾げた。
「私共がそちらから何を盗んだと?」
「梓を何処へ隠したんだい!」
藤子は般若の如く二人へと詰め寄るが、二人には全く心当たりはない。
だが、このことで二人は理解した。もう歯車は動きだし、それを止める術はないのだと。
そのため、天河は藤子へとこう返した。
「私共は何もしておりません。何処をお探しになっても構いませんが、このままでは警察沙汰となりましょう。今晩の演奏会へ梓さんを招待させて頂いております故、貴女もお越し下さればきっと見付かることでしょう。」
「何を言って…」
「別に無理にとは申しませんが、洋介氏には招待状をお送りさせて頂いている故、お二方でいらして下さい。では、私共は仕事があります故、これにて失礼致します。」
天河は淡々とそう言ってグスターヴと共に出て行こうとしたが、そこで藤子はハッとして二人へと怒鳴った。
「お前達が梓をどうしようと草の根分けて探しだし、敬一郎へ渡すからな!邪魔はさせない!」
藤子の言葉に嫌々ながら振り返り、天河は溜め息を洩らして言った。
「私は先に“何もしておりません"と申し上げた筈。」
「この狐が。お前達は萩野家へ行っただろうが。全て聞いているぞ。」
「ほぅ。して、誰からお聞きに?いや、見当はつきますね。実母に窘められ、貴女に頼った
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