第四話
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。他人の悪口は言いたくありませんが、あの人は金のためならお二方すら殺すでしょう。」
「これは穏やかではありませんね。」
天河もグラスを置く。グスターヴは我れ関せずで飲み食いしているが、それを無視して二人は話を進めた。
「あの藤子と言う人物ですが、前に財産目的で七十近い老人と結婚していたんです。結婚して二年と経たぬ内に亭主は亡くなりましたが。」
「藤子が殺した…と?」
「医師はそう考えなかった様です。心臓麻痺によるものとして片付けられてますが、藤子は医師にも警察にも多額の賄賂を贈っていたようで、真相は闇の中ですわ。」
「良く調べられましたね。」
「萩野の情報網を見縊られては困りますわ。」
そう言って静江は再びグラスを手にし、ワインで口の渇きを癒して後を続けた。
「あの藤子と言う人物、少なくとも三回は結婚していますの。巧妙に隠してはいますが、そのどれもが二年以内に亭主が死んでいる…。松山に嫁いでもうすぐ二年…私も目を光らせてはいますが、もし梓ちゃんが敬一郎と結婚したら…」
「洋介氏は…殺されると?」
「可能性は高いですわ。そこで、お二方にご相談があります。」
そう言って静江はニッコリと笑みを見せた。
「願叶師…ご存知ですわね?」
「ヴーッ!」
グスターヴが噴き出した。
「は?ありゃ単なる噂じゃねぇか!」
「あら嫌だ、知らないんですの?あの上田戸組崩壊事件。」
「…!」
「湖智谷銀行の件や…」
「…!!」
「森内副総裁のご令嬢が誘拐された事件…」
「…!!!」
一体何者なのかと、天河とグスターヴは冷や汗を流しつつ静江を見詰めた。
静江が並べ立てていることは、二人が願叶師として契約を交わしたものばかり。だが、関係者の記憶は消しているため、それらがこうも明るみに出るはずはないのだ。
しかし…二人の前に座るこの女性は、それを的確に挙げている…。
「あら、顔色が優れませんね。」
「い…いえ…。」
天河は少々口籠もってしまった。グスターヴに至っては目を游がせている有り様だ。
「お二方、ご存知でしょ?」
再びニッコリと問い掛ける静江に、二人はゾッとしてしまう。その後ろにこう見えたのだ。
- 早く言わんか、このバカタレが! -
この女性は絶対敵にしたくない。
天河は深い溜め息を吐いた。今まで数百年…バレたことなど一度もないのだ。これが現在の社会なのだと痛感させられた。
「夫人、ご名答です。ですが、何故分かったのですか?」
「時雨!」
「良いだろ?後で記憶を消すんだから。」
「そう言う問題じゃねぇよ!」
天河とグスターヴが言い争いを始めたため、静江はグスターヴに「少し黙って頂けますかしら?」と極上の笑みで言ったため、グスターヴは蒼くなって黙り込んだ。
「どうして分かったの
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