第四話
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ンだったのだ。天河はさして酒を飲まないため、そういう知識には疎かったのだ。
「あの…」
「そんな大層なものではありませんわ。ワインとてただの酒で、飲んでこそ価値があると言うもの。」
「時雨、そう言うことだ!」
もう二人を止める術はないと、天河は仕方無く「では…遠慮なく…。」と囁く様に返すしかなかった。グスターヴ一人ならまだしも、静江までこの調子では天河に勝ち目はなかった…。
天河等はその持て成しを受けることにしたが、無論、話をうやむやに終わらせるつもりはなかった。
「不躾な問いとは思いますが…夫人は政略結婚なのですか?」
「いえ、実はそうではありませんの。主人はああ見えて、以前は熱烈だったんですのよ?」
静江のその言葉に、二人は「今もだろっ!」と心中でツッコンだが、それを表には出さなかった。ただ、眉をピクリとさせてはいたが。
「では…恋愛結婚?」
「そうなりますかしら?でも、私は最初お断りしましたのよ?」
「…え?」
天河とグスターヴは顔を見合わせた。そんな二人が可笑しかったのか、静江を軽く口を押さえて笑い、そんな二人へとこう言った。
「可笑しなことではありませんでしょ?そもそも、私は染め物屋の娘。身分違いですし、それに…好みではありませんでしたもの。」
二人は呆気に取られた。
藤一郎の容姿は悪くない上に資産家の長男。恐らくは学業でも上位だったと思われるが…好みではないと一蹴したと言うのだから、驚かずにはいられない。まぁ、好みは人それぞれではあるのだが…。
「…なんでまた結婚を承知されたのですか…?」
「何度断ってもプロポーズしてくるのですもの。恋文も毎日の様に寄越しますし、なんだか可哀想になってきましてねぇ。」
「はぁ…可哀想…。」
「だってあの人、五十回もプロポーズしてきたんですもの。」
「はいぃ!?」
今まで些か俯いて眉をピクピクさせていた二人だが、それを聞いて思い切り顔を上げた。そして、グスターヴが恐る恐る口を開いた。
「一体…何年越しだ…?」
「そうですわねぇ…私が十五の時からですので、四年ですわね。」
「…。」
何とも豪胆な女性だと二人は思った。逆に何と諦め悪い男だ荻野は…とも。
「でも、あんなに断り続けても私が良いと言うのですから、女冥利に尽きますでしょ?あの人との初夜はそりゃ…」
「その後は結構です。」
天河とグスターヴは半眼になって同時に言った。他人のそんな話なんぞ聞いてる場合ではないのだ。
「あら、私ったら…。それで、お二方はこれからどうなさるお積もりですの?」
「そうですね…今度は松山家を伺おうかと。」
静江の問いに天河がそう返すと、静江はグラスを置いて真顔で言った。
「それは止した方が宜しいでしょうね。」
「何故です?」
「あの後妻は話になりません
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