第四話
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美しく背も高い。美青年…そう言っても良いだろう。天河とグスターヴには一歩劣りはするが。
「母さん、その人達は?」
どうやら、この青年が敬一郎のようだ。
「敬一郎。この方達はお前と梓ちゃんの件でお見えになっているんですよ。」
「…。修の奴…まだ諦めてないのか。」
敬一郎はそうボソリと呟くと、天河等を睨み付けて挨拶も無しに言った。
「お前達、修に言っておけ。身分違いも甚だしいとな。ま、明日の夜には梓は俺のものになる。あいつの悔しがる顔が目に浮かぶ。」
そう言うや、彼はニタリと笑って部屋を出ていった。父親にそっくりな笑みに、二人は些か怒りが込み上げたが、何とかそれを沈めたのだった。
「申し訳ありません…。万事あの調子なもので…。」
「では、敬一郎さん本人は解消する気はない…と、そう言うことなんですね?」
「そうなのです。全く…男らしくない所も主人にそっくりで、私も殆手を焼いております。」
静江はそう言うや、再び「西川!」と声を掛けると、直ぐに先程の男性が入って来た。
「奥様、ご用でしょうか?」
「酒と食事を用意させなさい。」
「畏まりました。」
それを聞き、前の二人は目を丸くした。
「あの…奥様?」
一体何を始めようと言うのか理解出来ず、天河がそれを問おうと口を開いたが、静江はニッコリと笑みを見せて言った。
「折角お越し下さったのに何の持て成しもしないのは、萩野家の恥と言うものです。」
そう言い切る静江にグスターヴは笑みを溢したが、天河は些か顔を引き攣らせつつ返した。
「有り難いのですが…もう二十時を回っておりますので…。」
「未だ宵の口ですわ。帰りでしたら送らせますので、どうぞ御心配なく。」
静江が笑いながら天河にそう言うと、それにグスターヴが続けた。
「そうだぞ、時雨。持て成しを断るなんて失礼だ!」
「あら、こちらの方は良くお分かりで。」
何故か静江とグスターヴは馬が合う様だ。静江はどうやら少しばかりがさつな男が好みと見えるが、天河はそっと溜め息を洩らしてこう思った。
- 酒が飲みたいだけだろうがっ! -
天河は酒嫌い…と言うわけではないが、人前では滅多に飲むことはない。と言うのも、グスターヴが底無しだからだ。それで何度頭を抱えたことかと思い、天河は再度断ろうと口を開きかけた時、ふとドアが開かれて豪勢な食事と多くの酒が運ばれてきた。
「おい…それ…ロマネ・コンティじゃねぇか…?そっちは…シャトー・マルゴーじゃ…。」
運ばれてきた酒に、珍しくもグスターヴがたじろいだ。
「グスターヴ、どうしたんだ?」
「どうもこうも…。時雨…あれだけで俺達の給料、数ヶ月分は飛んじまうぞ…。」
「はぁ!?」
今度は天河もたじろいだ。
そこへ運ばれてきた酒は、そのどれもが最高級のワイ
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