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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第四話
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うなりたいわけ?」
「えっと…夫婦になりたいです。」
「それは分かってるよ。でも、相手は萩野家の許嫁。一方、君は自転車屋の跡取り息子。あの娘を幸せに出来るのかい?」
「努力は惜しみません!最初は苦労を掛けるかも知れませんが…私は絶対に彼女を幸せにしてみせます!」
 彼は彼で必死なようだ。だが、天河は人の心の移り変わりを多く見てきたため、敢えて修にこう言った。
「一時の感情では、人を幸せにすることなど出来はしないよ?」
「私は…ずっと梓さんを見てきました。梓さん以外、私は人生を共に歩む女性を見付けられませんでした。彼女への想いは、敬一郎に劣るものではありません!」
「う〜ん…。」
 天河は顎に手を当てて考える。
 梓と敬一郎は、別に正式に婚約している訳ではない。単に父親通しの口約束で許嫁と言っているに過ぎないのだ。
 その点から考えれば、梓から断りを入れても問題は無い。そういう時代になってきたのだから、寧ろそれで解決されて然るべきなのだ。
 だが、口約束をした当の父親達が揃って許嫁解消を許さないのは、やはりグスターヴが言った通り…と言うことなのだろう。
 まぁ、敬一郎自身に他に好きな相手でも見付かれば別だが、これまで梓一筋に生きてきたため、今更感が拭えないところではある。
「仕方無い…私が両家に言って話してみる。力になるかは分からないが、大学講師の肩書きが少しは役に立つかもね。」
「本当ですか!」
 修はそう言って目を輝かせるが、グスターヴはどうも乗り気ではない様だ。これでは他力本願で本末転倒…そう考えているのだろう。故に、グスターヴは天河を制してこう言った。
「おい、そんなことして拗れたらどうすんだ?」
「ま、それも考えたよ。でも、このままでも充分拗れてるだろ?」
「そりゃ…なぁ…。」
 グスターヴは半眼になって頭を掻く。
 天河とて他力本願より自身の努力で得てほしい…とは考えているが、両家の持つ権力は修にとっては越えがたい壁だ。だからこそ力を貸そうと思ったのだ。
 この件は天河が預かることにし、天河は修を家へと帰らせた。
 しかし、人間とはそうそう単純には行かぬもの。それを分かってはいるものの、その後に天河はそれを再確認させられたのだった。




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