第四話
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」
「それは良かった。それじゃあまた、近いうちにね。」
「はい。それでは、これで失礼させて頂きます。」
「うん、気を付けてね。」
天河がそう言うや、梓はもう一度二人へと頭を下げて店を後にしたのだった。
「時雨、結局どうすんだ?」
グスターヴは梓の出て行った戸口を見ている天河へと問うと、天河は直ぐにグスターヴへと視線を変えて答えた。
「どうもこうも…敬一郎坊っちゃんをどうにかしないと話にならないだろう?ま、松山社長と萩野総裁にも悩まされるだろうね。」
「そんなこたぁ分かってるっつぅの!尤も、この二人がくっついて何かやらかすにしてもだ、子供にゃ関係無ぇだろ?あいつら元々親友だかんな。」
そこまで言ってグスターヴは珈琲を一口啜り、そして再び口を開いた。
「ま、戦後に萩野は松山に多額の出資をして立ち直らせた。萩野にとっちゃ端金だが、松山にとっちゃ萩野は恩人でもある。引くに引けねぇとこだよな。これだから人間ってヤツは…。」
「そう言うな、グスターヴ。人間は皆一様に同じくして生きることは不可能だから。誰かが幸福になれば、必ず誰かが不幸になるものだ。」
「だからって、そうそう諦められねぇだろ?」
「それだから困ってるんじゃないか…。」
振り出しに戻ってしまったため、天河は盛大な溜め息を吐くほかなかったのだった。
二人はそれから直ぐに店を出て、そのまま下宿している古本屋へと戻ることにした。
そこは電車で三駅の所にある。中々に賑わう商店街の端にあるが、そう大きな店ではなかった。老婦人が一人で運営している慎ましやかな古本屋なのだ。
「ただいま。」
裏口を開けてそう言うと、店の方から老婦人が顔を出した。
「お帰りなさい、先生。先程先生方にお客人がお見えで、待たせてほしいと言われますからお部屋へ通してありますよ。」
「客人?」
天河はそう言ってグスターヴと顔を見合わせると、直ぐに二階にある部屋へと向かって襖を開くと、そこには見知った青年の姿があった。
青年は二人の姿を見るや頭を下げて言った。
「突然押し掛けてしまい申し訳ありません。」
「客人って…修君だったのか。」
そこにいた青年は木下修…梓との話に出てきた人物で、梓の想い人だ。そしてこの木下青年もまた、梓を好いていた。
天河とグスターヴはやれやれと言った風に部屋に入って座ると、率直に彼へと言った。
「梓ちゃんのことで来たんだね?」
「はい。どうしても彼女と一緒になりたいんです。どうか先生方のお知恵を貸して頂けないかと思いまして…。」
「知恵…ねぇ…。」
天河はそう呟く様に言ってグスターヴを見るが、彼はそれに気付いてふいと外方を向いた。良い考えは無いようだ。
天河は仕方無く修へと視線を戻し、一度咳払いをしてから言った。
「で、君は梓ちゃんとど
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