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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第四話
I
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た問いとはかけ離れていたのだ。
「“ガンキョウシ"…とはなんでしょうか?」
 釘宮は多少首を傾げつつ問い返すと、老婆はふと笑みを溢して言った。
「願いを叶えると書くのですけど…知らなければ良いのですよ。もう七十年近くも前の話ですものねぇ。貴方が知らないのは当たり前でしたね。お忙しいのに失礼致しました。」
 老婆はそう謝罪して頭を下げるが、釘宮はそんな老婆へと慌てて返した。
「いえ、こちらこそ何も知らずに申し訳ありません。」
「貴方が謝る必要なんて無いのよ。では、御馳走様でした。」
 再び微笑んで軽く頭を下げてそう言うと、老婆はそのまま店を出ていったのだった。
 その後、釘宮はそれを忘れて仕事をしていたが、店を閉めた後にふと、あの老婆が言った“願叶師"と言う言葉が気になり、それとなくメフィストへと問ってみた。
「なぁ、“願叶師"ってのを知っているか?」
 その問いに、メフィストの表情が変化した。どうやら何か知っているようだ。
「まぁ君…それ、誰に聞いたの?」
「あの老婦人だよ。昼間来ていたね。」
 そう言われ、メフィストは淋しげな、それでいて何かを思い出している様な表情をして呟いた。
「やっぱり…あの子だったのか…。」
「あの子?」
 釘宮が不思議そうにそう言うと、メフィストはしまったと言った風に顔を顰めて言った。
「ごめん…今の聞かなかったことにして。」
「何でだよ。」
 釘宮は言いたがらないメフィストに食いついたが、メフィストは釘宮に背を向けて返した。
「雄君…この話を勝手にすると怒るんだ。雄君が帰って来たら自分で聞いて。」
「おい、何だよそれ。メフィスト!?」
 釘宮の声も聞かず、メフィストはそのまま自室へと入ったのだった。
「ったく…何なんだ?」
 そうぼやきつつ、釘宮も自室に入って遅い夕食をとったのだった。
 暫くすると、裏の玄関の扉が開く音がした。鈴野夜が帰ったと思い、釘宮は直ぐに部屋を出て階段の電気を点けると、直ぐ下にキョトンと上を見上げる鈴野夜の姿を見付けた。
「まぁ君、何か用?」
 鈴野夜が帰って来てもいつもは部屋を出ない釘宮が出てきたため、鈴野夜は些か驚いている風だった。
 そんな鈴野夜を釘宮は部屋へと招き入れ、そしてドアを閉めて言った。
「少し聞きたいことがあるんだが。」
「えっ…私はまた何かを壊してたのか?」
「いや、違う。」
 そう釘宮に速答されため、鈴野夜は一安心して座った。それというのも、釘宮に呼び出される時は決まって説教されるからだ。
 釘宮はそんな鈴野夜の向かいに座り、直ぐに本題を口にした。
「雄。お前、“願叶師"ってのを知ってるか?」
 そう問うと、鈴野夜もメフィストと同じ反応を示した。
「なぜ君が“それ"を知ってるんだ?」
 鈴野夜の声は明らかに硬化
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