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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第四話
I
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外と逞しいのね…。あ、あんなところにホクロ…。 -

 頭が春の女じゃあるまいに、小野田はそれでも鈴野夜をチラチラと横目に見ながらボタンを着けて行く。
 だがその間、何の会話も無いのは些か息苦しいと思い、小野田は口を開いた。ここで話をしないと、きっと窒息してしまうと思ったのだ。
「えっと…鈴野夜さん。」
「ん?なに?」
「えっとですね…この間友人から聞いた話なんですけど、木下って資産家の家で今、大変なことが起こってるって。」
「大変なこと?」
 鈴野夜は不思議そうに返した。いきなりこんな話を振られても、自分の様な貧乏人には無関係…としか考えようが無いのだが、ここで話を切るのもどうかと思って先を続けさせた。
「それが、昨年にお爺様が亡くなられたんですけど、その莫大な遺産をお婆様に配分を取り決める様にと遺言されたそうです。お婆様は遺言通りに自ら配分したそうですけど、子供たちに大した配分をせず、自分が死んだら残りは全て施設や貧しい人達に寄付する遺言状を作っちゃって…それで親族内で揉めてるんだそうですよ。」
「へぇ…金持ちってのは分からないねぇ。で、そのお婆様って、今どうしてるの?」
 鈴野夜は椅子に座りながら頬杖をついて小野田に視線をやると、小野田は再び顔を幾分紅潮させて返した。
「え?あっ…お婆様ですね。えっと、なんでも大きなお屋敷に一人で住んでるとか。何人かの使用人は一緒にいるって話でした。」
「身内は怒って誰も近付かない…か。」
 鈴野夜は淋しげにそう言うが、やはり上が裸なので何だか決まりが悪い。
 と、そこへドアを開けて釘宮が入って来た。
「お前達…一体何をしてるんだい…?」
 入って見れば正面に鈴野夜の半裸…釘宮は流石に顔を引き攣らせて聞いた。そんな釘宮に、鈴野夜は苦笑して答えると、釘宮は溜め息を洩らして返した。
「入っていきなりお前の裸は…キツい。」
「失敬な。」
 鈴野夜はそう言って半眼で釘宮を見た時、小野田はそんな鈴野夜へ制服を見せて言った。
「はい、鈴野夜さん。出来ました。」
「あ、有難う。へぇ、上手いもんだね。さすが女の子。」
「これ位誰でも出来ますよ。それじゃ、休憩行ってきます。」
 小野田は顔を赤らめながらそう言うと、直ぐ様事務所から出ていったのだった。
「おい、雄。お前、小野田の気持ち知ってるんだろ?」
 小野田が外へ出たことを確認し、釘宮はそう鈴野夜へ問った。問われた鈴野夜は浅く溜め息を吐き、ボタンが綺麗に付けられた制服を見つつ返した。
「まぁね。でも、僕はそれに応えられない。彼女も心のどこかで、それに気付いてるんじゃないかな。」
「お前、また余計なことしたら…」
「分かってる。いざとなったら…彼女の記憶を消すよ…。」
 鈴野夜はそう呟く様に言うと、制服を着て事務所を出たのだっ
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