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夜なき蕎麦
2部分:第二章
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かしその他は何もなく誰もいないのであった。
「ふむ。こうなっているのか」
 彼はその店の席に座って頷くのだった。
「誰もおらんのか」
 とりあえずそれはわかった。しかしそれで納得したわけではなかった。
 暫く待っていたが誰も来ない。彼はそれに少し苛立ちを覚えて一旦席を立って店の周りを見回した。しかしそこでも誰も見当たらなかった。音一つなく暗闇だけがあるのだった。風に吹かれて川の傍にある柳の葉の揺れる音が聞こえるだけであった。 
 それに首を傾げさせていたがまた席に戻ることにした。しかし待てども待てども誰も来ない。いい加減業を煮やして帰ろうと思った。
「何だ。こういうことか」
 誰もいないということが真相だと考えた。誰かが遠くから見て他人の反応を楽しんでいる、つまり単なる悪戯だと考えたのである。
 それで再び席を立ち提灯に向かった。そうして息でその中の火を消した。
 辺りは暗闇に戻る。彼はそれを見届けたうえで去ろうとした。しかしその時だった。
「どってんとっと」
「どってんとっと」
 不意に何処からか奇妙な声が聞こえてきた。
「どってんとっと」
「どってんとっと」
「何じゃこの声は」
 声を聞いてまずは怪訝な顔になる正芳だった。その顔で周囲を見回す。

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