結局のところ鷹巣隆也はわからない
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個人情報の保護という奴だろうか、中々に徹底している。
俺は差し出された作文を一行ずつ目で追っていく事にした。何々、青春とは嘘であり、悪である?やべぇなすげぇ共感できるんだけど!もう一行目からテンション高くなったんだけど!このままスーパーはいテンションまで言って攻撃して大ダメージを与えるしかないじゃん。
その後も読み進め、最後の一文まで読み終わった。俺が顔を上げたのを確認した先生は作文をしまった。その最中も名前を見ようと視線を動かすがうまいこと先生の手が邪魔で見えなかった。くそっ、本当に徹底していやがる。
俺が目を酷使していると、俺の目的に気づいたのか先生は呆れた様に溜め息を吐いた。
「君が気にすることは無い。それよりもこの作文を見てどう思う?」
「どう思うって……」
俺はある程度話すことを纏めてから口を開く。
「素晴らしい作文だと思いますよ、作者に是非会ってみたいですね」
俺の言葉にまたしても先生は大きな溜め息を吐いた。すると今度は深呼吸するように息を吐く。そして右手に握り拳を作り右腕ごとそれを後ろに引いてって……。
「ちょっ、待ってください!話せば分かります。きっとわかり合えるはずですよ。だから暴力だけは勘弁して下さい!」
顔の前で両手をぶんぶん振ると、その拳を下ろしてくれた。
「まったく、とことん似ていると感じるよ。とにかく、作文は提出し直すこと、良いな?」
「はい」
気になる単語が有ったが、今は当たり障りの無い事を言って先生の機嫌を直すしかない。
俺の返事を聞いた先生は急にふっと破顔した。
「鷹巣、色々言ってしまったが私は君の作文、そこまで嫌いではなかったぞ」
「先生……」
先生の言葉に思わず涙しそうになる。これがアメとムチという奴か。
「ちょうどこのくらいの紙を引き裂きたいくらいにストレスが溜まってたんだ。これなら破っても文句は言われまい」
俺の気のせいだった。貰ったアメが超激辛だったんだけども?辛すぎてハバネロが刷り込まれてるんじゃないかと疑うレベル。先生優しくする気皆無だったよ。
俺が呆然としていると昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。次期に5時限目の授業が始まる。流石に帰らないとまずいんだけど早く帰してくれないかな?
俺が声をかけようとしたときそれより早く先生が口を開いた。
「時間だな、帰りたまえ。いい暇潰しになったよ。ありがとう」
「ひでぇ」
先生が笑顔でお礼を言うもんだから怒りを通り越して呆れてしまった。もう帰ろう。
「失礼しました」
「ちょっと待て」
平塚先生に言い残し、職員室を後にしようとすると呼び止められてしまった。そのまま平塚先生は少しだけ早口で用件を述べた。
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