結局のところ鷹巣隆也はわからない
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青春とは嘘であり、悪である。
青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺き自らを取り巻く環境 を肯定的にとらえる。
彼らは青春の二文字の前ならば、どんな一般的な解釈も社会通念も 捻じ曲げてみせる。
彼らにかかれば嘘も秘密も罪科も失敗さえも、青春のスパイスでし かないのだ。
仮に失敗することが青春の証であるのなら友達作りに失敗した人間 もまた青春のド真ん中でなければおかしいではないか。
しかし、彼らはそれを認めないだろう。 すべては彼らのご都合主義でしかない。
結論を言おう。 青春を楽しむ愚か者ども、
爆発しろ。
平塚先生から聞いたこの学校に伝わる作文らしい。その話を聞いたとき、もの凄い共感的な何かを感じた。きっと宗教とかに入る時はこんな気持ちなのだろうと思う。
この作文は高校生活を振り替えってというテーマのもと作られたものらしいのだが、かなり的を射ている。近頃の高校生は大体こんな感じではないだろうか。
特に最初の一文が強く心に刺さった。一度これを書いた人に会ってみたいと思わせる一文だ。
しかし、この作文は自分を肯定してくれていると同時に否定している物の様にも感じた。
今まで積み上げてきた、今は無きその関係を否定している様な気がしたのだ。
別に過去の事なんてどうでも良くて今はその関係は無になったのだから気にすることは無い。
だけど、流石に今まで自分信じてきたものを否定されるのは、いい気分はしなかった。
人は過去の経験からその先の未来へと成長していく。ならばその過去そのものを否定されてしまえば未来は見失うってしまうのでは無いだろうか。
これからは何を目指していけばいいのだろう……。
◆◆◆
「何だ、この作文は?君はこんな文章を書く奴じゃなかっただろ?」
平塚先生は額に青筋を浮かべ、俺に見覚えのある紙を見せつけた。
奉仕部に入部した翌日の昼休み、俺は平塚先生に呼び出され、何事かと来てみると今の状況に至っていた。
「今更当たり障りの無い事書いても意味無いんで、もう突き抜ける事にしました」
俺の言葉に平塚先生は心底疲れたように溜め息を吐いた。
「まったく、君たちはどうしてこうも舐めた作文を書いてくるかね?」
「君たち?」
先生の言葉が引っ掛かり、尋ねてみる。すると先生は平然とかぶりを振った。
「すまない、私の言い間違いだ。まぁその事はいい、この作文を見てくれ」
そう言って先生は今まで持っていた作文、まぁ俺が書いた物なんだが、それを机の上に置き、引き出しの中から一冊のクリアファイルを取り出した。その中から一枚の紙を抜き取ると俺に見せてきた。
本来名前が書かれている場所は先生の指で塞がれている。
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