4部分:第四章
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ある。気付けばそこにいたのだ。
「何だってんだ、あれは」
今井戸の中にいるのに気付いてからの言葉だ。
「ありゃよ。何だってんだ」
自分が見たものを信じたくなかった。闇の中から出て来て絡め合いだしたところで記憶は止まっているのだ。そうして。
覚えていないのを幸いに思っていた。そのうえで井戸を登り酒場に戻ると。
「よお、どうだったんだ?」
「それで何がいたんだ?」
「グールの奴等がいたぜ」
このことだけを話すのだった。
「その連中がいてな。大変だったんだぜ」
「そうか。グールか」
「大勢死んだらしいからな。先の戦いで」
「倒すことは倒したがまだまだ出て来るだろうな」
ここでは真実を話さなかった。
「だからな。あの井戸埋めちまおうぜ」
「そうだな。そんなのがいるんだったらな」
「多分街で人が朝消えるのも」
冒険者達もそれだろうと考えた。実際のところムキハもある程度はそうだと思っていた。しかしそれはあくまである程度であり。それ以上に恐ろしいものも予想していた。
しかしその予想は隠して皆に話すのだった。
「だからだ。井戸を埋めてな」
「封印もしておくか」
「だよな」
「封印はしっかりとしたのにしような」
こうも言うムキハだった。
「冒険者の中には僧侶もビショップもロードも大勢いるしな」
「じゃあ皆でやるか」
「戒律とか抜きにしてな」
「ああ、そうしないと駄目だな」
こう一同に話す。
「それじゃあ行くか」
「よし」
「じゃあな」
こうして井戸は埋められ封印が施されることになった。ムキハは僧侶等の職業にある冒険者達が封印を施すのを見ながらそのうえで一人呟いた。
「見ちゃいけねえものは世の中にあるってことだな」
こう呟くのだった。
「そういうのは。こうした方がいいってことだな」
封印は施され井戸は埋められた。これ以降少なくとも街から突如として人が消えることはなくなった。だがムキハは井戸の中で見たことを死ぬまで語ることはなかった。永遠に。
井戸の中 完
2009・11・2
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