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井戸の中
1部分:第一章
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 不意に誰かが言った。
「誰も使っていない昔から涸れている。街の南の第二門の横の井戸だ」
 そこが怪しいというのである。
「あの井戸からは腐臭がいつもする。絶対に何かがある」
 こう言われるのである。自然とその井戸が注目されるようになった。
 しかし、であった。
 その井戸からの腐臭が物凄いものであった。耐えられないまでなのだ。
「動物が腐ったうえに糞尿をこれでもかと入れたような」
「耐えられない腐臭だ」
 こう言ってだった。誰も井戸の中に入ろうとしなかった。
 しかしであった。ここで。黒い東方のものと思われる装束を身にまとった小柄な男が出て来た。見れば中年のホビットであった。
「ひひひ、じゃあ俺に任せてくれよ」
 黄色い顔に吊り上った目を持っている。そしてその頭は東方の島国風の髷である。彼の名はムキハ、この街に来たばかりの忍者であった。
「俺が行って中を確かめて来るからな」
「忍者が行くのか」88
「じゃあおあつらえ向きか?」
 忍者という職業については皆知っていた。盗賊の技量を持ち独特の武器を使い驚異的な身体能力を誇る。そのうえ錬金術師の技量も併せ持っている。そうした職業である・
 このムキハはその中でも大陸西部屈指の忍者であった。その彼が名乗り出てきたのである。
 彼はまず名乗り出てから一同に問うた。
「報酬はあるんだろうな」
「ああアジード卿が出してくれるそうだ」
「十年は遊んで暮らせるだけな」
「ひひひ、じゃあ受けるぜ」
 彼はそれを聞いて満足そうに頷いた。なお忍者は戒律が悪でなければなれはしない。そうした意味でも独特の存在であるのだ。

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