幕間 〜幸せを探すツバサ〜
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、黒麒麟様」
噂で聞いてる通りなんだろう、と店主は意地悪く笑った。
記憶が戻った時、もし黒麒麟が彼女と幸せになるのなら嬉しいことだ。しかし借りとは思ってない秋斗としては煮え切らない。これ以上何かを言うのも野暮ではあるから、もはや何も言えないが。
ため息を一つ吐いた。目をキラキラとさせて銀細工を選んでいる少女達に目を送る。
彼女達がそれぞれ気に入ったカタチを探している愛らしいその姿に、まあいいか、と秋斗は微笑みを零した。
ふと、一つだけ、彼は面白いモノを見つけた。どうやら店主が直していたモノらしい。二つセットのそれに目が行って離れない。
「ん? これが気になるのか?」
ひょい、と店主が手に取ったそれをじっくりと見た。片翼ずつでセットになった鳥の羽の銀細工。
「ああ。それ見せて貰えるか?」
「構わねぇぞ。ってかよ、これは二つで一つだ。ほら、こんなふうに……」
得意げな顔でその銀細工を合わせる。カチリ、と小さな音が鳴って、二つは一つに繋がった。
「おお……すげぇなこれ」
「弟の自信作なんだぜ? どうせなら……コレを持って行ってくれてもいいぞ」
「いや、それはさすがに悪い。二つで一つなんだろ? 離れ離れにするのはよろしくない」
「何言ってんだ。二つ共だよ。あんたにゃツバサがお似合いだ。鳳凰の羽を手に入れた黒麒麟って感じで中々いいじゃねぇか。片割れはその子に渡しとけ。二人っきりの時にでも付けて貰えばいいさ」
がははと男勝りに笑って肩を叩き、店主は丁寧に布で包んだ後、黒い箱に入れてその首飾りを渡した。
「……ありがと」
礼を一つ。店主は満足したのか彼女達が見る商品の説明に向かった。
じ……と箱を見やる。中に入っている二つのツバサは彼女を思わせた。
彼女が居るから高く飛べるようになった。彼女を救いたいと願わなければ、今の自分も周りも無い。
――俺を強くしてくれたことに対して……いや、違う。もっといいモノがある。
伝えることは出来ない。
支えてくれたのは月と詠が大きくて。そして旧来の彼女達だけでなく風や朔夜、稟に霞にと順繰りに何人も……新しく絆を繋いだ曹操軍の重鎮達。徐晃隊の面々や他の隊の兵士達も、店長や街の民達も、彼を想ってくれたのだ。たった一人に与えるには、もうその想いは不釣り合い過ぎた。
皆に返す想いはゆっくりと、自分だけで返せばいい。それぞれにそれぞれのカタチで。
――片方のツバサは……大切な時まで、黒麒麟にも分かるよう取っておこう。それまでは俺が鳳凰の羽を借りとく。でも……一個貸しだからな、黒麒麟。
これだけは、彼女から聞いた約束の為。
“二人で幸せを探す為の羽になる”
繋いだ約束をカタチにして見えるように。
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