暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
幕間  〜幸せを探すツバサ〜
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がにと口を挟もうとした月を、詠が割って入って止めた。雛里は少し考えてから、頭を一つ下げた。
 はっと気付いた月も、遅れてお礼を一つ。

「ありがとうございます」

 秋斗は店主の目をじっと見やり、選んでいる彼女達に聞こえないように囁いた。

「店長の金で買うってのも嫌だから明日払いに来るよ。実は買えるだけの“手を付けてない貯金”はあるからな……先行投資ってことにする。ただ、俺のは受け取れない」

 実は、黒麒麟の時に貯めた金は残っているのだ。好きにしていいと雛里や月や詠が言っていても、他人の財産を切り崩すようで嫌だっただけ。
 本当に他人の借りを使うよりは、昔の自分に借りる方が秋斗にとってまだマシだった。

「あんた……固い奴だな」
「ほっとけ。だから店長には相応の金を払って来い。どうせ働くならお前さんがすっきり働けるのが一番だろ。商人にとって信用は絶対なんだからさ」

 間違った罰は本人が受けるべきだ、しかしこれを機に落ちた信用を取り戻す第一歩にしてほしい、そう願った。
 信賞必罰でも、その後がある。二度と機会を与えない程の罪か否か、それが問題なのだから。この商人が再び間違えたなら、秋斗の人を見る目はその程度ということ。

「……んじゃあよ、ウチの銀細工の宣伝ってことで商品を一つ預けるから持って置いてくれよ。それならいいだろ? あんたが着ければ宣伝効果だってあるはずだ」

 食い下がる男の瞳を真っ直ぐに見つめた秋斗。
 不振な色は見当たらない。別にこの程度の知識は参考にして好きに使ってくれたらいいと思っていたが、そこまで言われては断るのも悪い。

「ん、分かった。じゃあ金が貯まったら買い取るってことで」
「おう、ありがとよ。これからよろしく頼む」

 契約成立、と彼は手を差し出し、店主も握り返した。申し訳ないと頭を掻いた店主は、悪戯を思いついたような顔に変わった。
 彼に聞こえる声で、小さくこんな耳打ちを一つ。

「それと……あんたが言ってたえんげぇじりんぐと結婚指輪だけど……商売が軌道に乗ったらあんたの分だけ特注且つタダで構わねぇぞ」
「はぁ? それは嫌――――」
「平穏を生み出す霊獣への供物ってことにしとけ、な? 袁家は商売相手としては良くても、あのまま続いてたらきっと平穏には暮らせなかったに違いねぇ。弟と一緒に働けるってのも俺には嬉しいんだ。だから、いいだろ?」

 誠実さは何より大事なこと。彼の対応は商売人として信頼に足りる。
 危険を冒さず、平穏無事に商売人として一旗あげられる。覇王の街のしきたりも身に染みた。夢は大きく、その新しい足がかりを作ってくれた秋斗には誠意を持って接したいと思った。

「……とりあえず保留にしとく」
「期待してるぜ。くくっ、鳳凰様と仲良くするんだぜ
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