幕間 〜幸せを探すツバサ〜
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それにしても勿体ないですねぇ……せっかく、私と徐晃様、そして覇王様という商売仲間を得られるというのに、あなたは徐晃様の提案したことを他の街で試すおつもりなんでしょう?」
店長は他者の欲望を容易く見抜く。金の匂いがすれば余計に鋭く、強かに。遥か昔に洛陽の最高級店で欲望溢れる魑魅魍魎の相手をした経験はダテでは無いのだ。
ビシリと固まった露天商は、顔を真っ青に染めていた。
詠は店長に感嘆の吐息を漏らした。料理人にしておくのが勿体ない、と。
「徐晃様は戦に対して悪くなれる人ですが、商売での腹黒さはまだ私の所で勉強中でして。
さて、どうします? 私にも腕のいい銀細工商人の知り合いがいます。徐晃様に紹介するのは容易いですが……これも何かの縁、手を組んでみませんか?」
友好的に思えるが、裏を返せば、他の街で試しても準備を整えられるのは間違いなくこの街の方が速いということ。所詮は二番煎じとして封殺されるのがオチで、宣伝効果も利益率も段違いである。
露店商はゴクリと生唾を呑み込んだ。断る選択肢は、利を求める商人であれば有り得ない。信用は言うまでもなく、失った後ろ盾を得るには最高の状況。この大口契約を取らずして、また返り咲く芽は……ほぼ無い。
「……申し訳、ありません、でした」
「謝らずともいいじゃないですか。何か問題でも? あなたは規則を破った。でも私は対価で許した。それで終わりで新しい話をしていたんです。だから……こういう時はこう言うんですよ」
冷気漂う店長の空気に当てられて、憎しみや怒りよりもその男は恐怖に憑りつかれていた。
にやりと意地の悪い笑みを浮かべて、店長は彼に手を差し出した。
「どうぞこれからも御贔屓に、とね」
握手を一つ、店長は秋斗にコクリと頷いて去って行った。
店長に感謝はしているが、ああまでやり込める様を見せられるとさすがに居辛い。カチコチと固まっている露店商に、秋斗は優しく話し掛けた。
「まあ、なんだ。俺が欲しいから誘ったわけで、お前さんの売ってる銀細工のカタチが気に入ったから話したんだ。こんな綺麗で細かい彫り物で絆を誓えたら、きっと幸せだろうなって思って……だから気にしないで――――」
「いや、慰めないでくれ……格の違いって奴を知ったよ。弟は一級だが、俺はそれに甘えてるみてぇなもんだな。すまんかった」
彼の慰めが心に痛い。露店商はすっきりしたような表情で、不安そうに彼と店主を見ていた三人の少女に言った。
「……お嬢ちゃん達。華の首飾りを一つずつ選びな。そんで……徐晃様もなんでも一つ好きなの持って行ってくれや。弟には俺が説明するからよ」
「え……そ、そんなの――――」
「分かった。有り難く貰っておくわ」
「……ありがとうございます」
さす
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