暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
幕間  〜幸せを探すツバサ〜
[13/18]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
するんじゃなかったのか?」
「楽しい催しを考えたらしいですからね。覇王様にも困ったモノですよ」

 にやりと、店長は笑った。

「おかしいな……悪い予感しかしない」
「ふふ、戦を終えて随分とお変わりになりましたよ、覇王様は」

 人の機微に聡い店長であれど、華琳の内心の全ては測りかねる。しかし今までよりは随分と面白い変化を遂げたと思う。
 肩の力の抜き方を知った、そんな感覚。前まで張りつめすぎていた空気は、覇気は衰えることなくとも少しだけ柔らかい時も見せる……そう思えるのだ。

――あなたの緩さが移ったのか、それとも何か違うモノか……解りかねますが、今の覇王様の方が生き生きとしています。

 乱世など早く終わればいいのに。
 店長は願う。皆が戻ってきた途端に騒がしく愛おしい日常が現れるのだ。ずっとそれを続けて欲しい。
 あの懐かしき幽州の街が好きな店長は、似たようなこの街も大好きだった。
 思い出は宝物。あの時の時間はもう帰って来ない。されども、今も大切なモノが確かにあった。

「そうかい……んじゃあ、夜はよろしく頼む。久しぶりに店長のメシをたらふく食べたかったんだ」
「それはどうも。では最高の休日を過ごして来てください。ただ、料理にしてもなんにしても締めが大事です。その一助を担わせて貰うことに感謝を」
「いつもありがと。んじゃ、また夜に」
「ええ。……めいど長、みゅう、行きますよ」
「はい、店長」
「は、はいなのじゃ! ご、ごごごご来店の再はっ……あ、あああ愛情を込めるゆえ……妾のことは食べないでくりゃれ!」
「お、おう。食べないよ、約束する」

 秋斗は最後にきつい一撃を貰って返事をしつつも項垂れる。
 去り際、店長は思い出したように銀細工の露店商に笑みを一つ向け、

「私の店の名を利用、私のお客様への介入……それらは商人として別に構いませんが、露店の場所代掛けることの日数、その代金は払って頂きます。この場所は私が管理する商業区域でしてね。
 この街の門をくぐる時に規則を言われたでしょう? 露店を出すなら区域の長もしくは警備詰所で申請して許可を得るべし、と。覇王の治める街を舐めてはいけません。忠告されてもやらないバカは必ず痛い目を見ることになります。だから私の区域では、二度目の注意なんてしてあげないんですよ」

 商売は甘くないですから、と付け足しつつ、バンダナをきゅっと整えた。
 顔は笑っていても、その目は全く笑っていない。後ろについている少女がガタガタと震えていた。
 怒らせてはならない男を、露店商は怒らせたのだ。

「華の首飾り二つ分、で如何ですか? 本来は無断出店につき罰金上乗せなんですが……全て無料では丹精込めて作ったあなたの弟さんが可哀相ですし、それで許してあげましょう。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ