幕間 〜幸せを探すツバサ〜
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機を得たりと、彼の元に近付く人影が、一つ。
「貸し一つ……ですね」
「クク、あんなに人だかりが出来てるとは思わなかった。助かったよ」
「あなたならこの露店商の前で何かしらするとは思ってましたから。噂が広まるのは拙いでしょう? 記憶は……戻らなかったんですね」
「相変わらず鋭いこって……ただいま、店長」
「はい。おかえりなさい、徐晃様」
すまないな、と目礼を一つして彼は手を差し出し、店長もそれを握りしめる。
赤いバンダナをはためかせ、友が帰ってきたことへの歓びを笑顔に乗せて。
カレーの材料は渡しても、店があるため直接は会っていなかった二人。店長の後ろに侍る二人の給仕のうち一人が、男二人のやり取りにキラキラとした視線を向けているのは、まあ、朔夜が広めた薔薇の華的なアレであるのはお察し。
露天商に一言断りを入れて、彼女達にゆっくり見たらいいと告げてから、彼は店長に向き直った。
「あ、紹介しておきますね。新しい給仕見習いの“みゅう”です。みゅう、こちらは……知っていると思いますが黒麒麟、徐晃様ですよ。ご挨拶しなさい」
ビクリ、と肩を震わせたはちみつ色の髪の少女が、おずおずと秋斗を見上げた。目が合った彼女は、ひ……ひ……と恐怖から肩を震わせる。
そんな少女の姿に、何がなんだか分からない秋斗はショックを受けながらもどうにかフレンドリーに見えるよう微笑みを浮かべて……
「はじめまし――――」
「い、いらっしゃいませなのじゃぁ! やめてたも! どうか食べないで欲しいのじゃぁ!」
挨拶の途中で遮られた。
直ぐに店長の後ろに隠れた少女は涙目であった。彼も少女から拒絶されて本気で涙目だった。そんな彼を見て店長は大爆笑せざるを得なかった。
「くっ、あははははっ! この人はっ……くくっ、幼女が大好物の変態、ふふっ、ですけど……そんな怯えなくていい、です、よ……うくくく……」
「よし、その喧嘩買った。華琳に新しい料理教えて来るから負けて来い」
人頼みな時点で情けない、とは店長も言えない。それどころでは無かった。
しょうこともない、こんなくだらない空気が好きで、前のような関係で居られることが本当に嬉しい。
「……っはぁー……まあ、事実を使った冗談は此処までに致しまして……」
「冗談って言わないんだが!?」
「時間もありませんし、とりあえず本題を」
「無視……だと……? 帰ってきたのに店長が優しくない……」
扱い方は誰よりも知っている。同性ゆえ、ある意味で雛里以上に彼と親しいのだから。
しょんぼりと落ち込む振りをしている彼に苦笑を一つ。
「はいはい。まったく……宴会は夜天の間で行う、とのことです。腕によりを掛けた料理をご用意いたしますのでお楽しみに」
「あれ? 城で
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