幕間 〜幸せを探すツバサ〜
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ぁ」
「たっはっ! そりゃ金なんか残らねぇ! あんたまさか全部に出席してんのか!? 他の奴が徐公明は商人との繋ぎ役も担ってるって言ってたが……マジだったのかよ!」
「そう、街が良くなるにつれて俺の財布は軽くなるのさ……別に最低限生きていける分は残してるから問題ないけど」
「お、おう。どういったらいいか分からねぇ」
「よし、じゃあローン……回数払いで頼む!」
「悪いな、ウチは一括のみだ!」
「なに!? くそ……マジか……其処をなんとか――――」
ただ、彼は彼で店主と盛り上がっていた。カオスである。
片や女の子は妄想の世界に行ってしまっているし、男二人は値切り交渉でやいのやいのと騒いでいる。
それで一目を引かないという方が無理であろう。気付かぬ内に周りには人の波。街道すら埋め尽くすありさまであった。
なんだかんだで楽しい事が好きな街の人々は、情報を手に入れる為に野次馬として聞き耳を立てていた。
三人の少女が顔を赤らめて銀細工の前に居る。彼が値段交渉をしている。そうか、間違いなくこの三人とは恋仲なのだ……と、誰もが思うのは自然なこと。
噂が流れるのは早かろう。厄介なモノ達の耳に届くのも早かろう。誤解を解くのにどれだけの時間が掛かることか。民だけならまだいい。この件が耳に入って面白くないモノや、悪戯を企むモノからどんなことをされる事か……必死で交渉している彼は気付かない。
そんな裏で着々と事が進むと予想される人だかりの側で、桃色と青色と紫色の髪をした三人の乙女がマイクを持って楽しげに笑った。
「お集まりの皆さまに朗報をお届けっ! なんと娘娘の新作甘味が今日より発売っ♪ 美容に一番! お姉さまもお嬢さんも食べたら分かるこの違いっ!」
「お手頃価格で美容に効くあまぁい“ふるぅつお菓子”とぉー、甘くてとろける女子の憧れお菓子はいかがかなぁーっ♪ すぃーつ男子な君たちにも一曲だけ歌を歌ってもいいかなー!」
「いつもの合言葉を言ってくれたら……あたし達がイイコトしてあげちゃったりっ? なぁんて!」
瞬間、その人だかりの目の色が変わる。
綺麗になりたいのは女の願いで、甘いモノに目が無いのも女子の大半。店長の考案したモノにハズレは無い。
そして……この街の男共で彼女達……“役満姉妹”を知らないモノは居ないのだ。
「店長の新作甘味ですって!? そんなのすぐなくなっちゃうわよ!?」
「行かなきゃ! 娘娘の新作だけは逃さないんだから!」
「ほあ――――――っ!」
「おいマジかよ! イイコトってなんだぁ!?」
さすがの秋斗であろうと、妄想に跳んでいた彼女達であろうと、その異常な空気を感じ取れぬはずも無く。
呆気に取られるままに、人の群れが去って行く後ろをポカンと呆けたままで見つめていた。
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