第10話
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治安がさらに良くなった。
余談ではあるが私服警邏隊設立当初、見張られる不快感があるとして一定の反感を呼んだものの、目に見えて向上していく治安に反感の声は鳴りを潜めていった。
―――さて、このように複数の問題に袁紹は奔走していたが、その中には良い知らせもあった。
魚醤である。袁紹の提案により袁家で独占販売されたこの調味料は、楽市楽座の流通活性化により瞬く間に各地に広がり反響を呼んだ、生産に塩を大量に使うため発売当初かなりの高値で庶民には手が出なかったが揚浜式塩田と入浜式塩田による塩の製法を国に提出し、塩の生産性が劇的に向上したため、その報奨としてひと月ごとに大量の塩を無料で融通してもらえるようになり、魚醤の生産費を大幅に抑えることが出来るようになった結果、良心的な価格で販売され庶民の中にも広まっていった。
すでに魚醤を使った料理なども出回っていると言う。
当初赤字だった袁紹の政策は試行錯誤を繰り返しながらも、今では何とか黒字を出し続けている。
………
……
…
日々色んな政務で頭を悩ませてきた袁紹に、またもや問題が猫耳をつけてやって来た。
「お初にお目にかかります袁紹様。荀ケと申します――」
一見、丁寧な挨拶をしているように見える、事実頭を下げるまでの一連の美しい動作に魅入られた者達もいるようだ。
まるでお手本のようなその動きに、猪々子が口笛を吹き斗詩がそれを諌める。
いつもの袁家の暖かい空間のはずが、袁紹はやや厳しい顔をしていた。
(―――男嫌い、か)
謁見の間には荀家から派遣された彼女を一目見ようと重鎮達が来ている。 彼等はの中には男も居た、扉が開かれ彼女が姿を現すと当然皆の視線が向く、その時彼女は一瞬表情を歪ませた。
そして扉の前まで案内して来た侍女に笑顔で解釈し、玉座の前まで案内する男の武官にはまた一瞬顔を引きつらせ
袁紹の前まで来た彼女は顔に笑顔を張り付かせていたものの、袁紹を見る目に浮かぶ嫌悪感までは隠せていなかった。
たったそれだけではあったが袁紹は見事彼女の本質を見抜いた――
「母達ての希望により参りましたが、私は非才なる身、余りご期待に応えられるとは思えません」
―――おおっ、なんと謙虚な
―――荀家一の才女なのに驕った様子が無いとは
―――最近の若者にしては立派ですな!
―――左様、謙虚さこそが若者の美徳である
荀ケの言葉と態度に次々と褒め始めていく重鎮達―――、中には謙虚という言葉を発しながら袁紹をチラチラと見る者までいた。
しかし、袁紹には荀ケの言葉の真意がわかった
(遠まわしではあるが『此処に来たのは母親のせいで私の意志じゃない、お前に自分を売り込むつもりは無い』といった所か……フッ、随分嫌われたものだ
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