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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  〜無形物を統べるもの〜
兄妹喧嘩 B
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は発音できない、すべての生物に発音できないはずのその名を唱えると、一輝は両手で構えて跳ぶ。それに対して湖札は右手を突き出し、左手で二の腕強く握って呪力を注ぎ込み・・・

「疑似創星図、再起動!」

無理矢理に消えかけていた疑似創星図を起動しなおし、その顎で大鎌の刃に喰らいつく。
改めて完全に拮抗した状態になると、二人は全く同時に左手をはなし、指を揃えて後ろに引き・・・鈍色の光に、包まれる。

「「疑似創星図、起動!」」

全く同じフレーズを全く同じタイミングで唱え、その鈍色の光はより一層輝きを持つ。

「百鬼よ駆けよ」
(めぐ)りて駆けよ」
「「百鬼矢光!」」

これまたまったく同じように解放され、しかし内包するものに大きな差がある二つの攻撃は、その差故に一輝の勝利に終わる。しかしそれは、ただ威力を比べるだけであればの話。驚くことに、湖札はその一撃をギリギリまで絞り、細くすることで、兄のそれと相打ちにまでもっていく。
たった一人が十五年とちょっとの時間で作り上げたそれ。兄が持つ六十三代をかさねたそれに比べればはるかに格下のそれだが、しかしだからこそ、自分一人で作り上げてきたものだからこそ、多少の自由がきいた。

再びの爆音。二つの百鬼矢光だけでなく、彼らが歪みから手に入れた疑似創星図もそこでため込んだエネルギーを吐き出し、そろって吹き飛ばされた。
技術をぶつけあっても千日手。呪術を比べあっても千日手。権能を比べあっても千日手。ギフトによる応酬でも千日手。疑似創星図をぶつけあってすら、千日手。
もはや次元が三つ四つ違う戦いを繰り広げている二人に対して、もはや誰一人として言葉を発することもできない。客席にいるものも。審判として空中にいる黒ウサギも。そしてゲーム盤の外、映像としてこの光景を見ている三人も、口を開け、身を乗り出し、食い入るようにその光景を目に焼き付ける。何のルールもなく、箱庭らしさのかけらもない・・・だからこそ、これぞ箱庭であると訴えかけるような、そんな二人のゲーム。箱庭にて上に昇らんと野望を抱く者たちにとって、その光景はどこまでも心憧れるものであった。
そして、そんな感情を抱かれているとはつゆほども考えていない二人は、目を見開き、歯を剥いて、どこまでも凶暴に笑う。
目に映るのは、相手一人だけ。
耳に入るのは、兄妹の呼吸の音のみ。
肌で感じるのは、最愛の家族から向けられる殺気ただ一つ。

「大好きだぞ、湖札」
「うん、大好きだよ、兄さん」

そして、一言だけ言葉を交わした二人は拳を構え、同時に踏み込んで、再び消える。どうなったとゲーム盤を見る観客たちは、しかし今度はすぐに見つけることができた。
消えるその瞬間まで、二人がいた場所。そのちょうど真ん中で、お互いに一撃を入れた体勢で固まって
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