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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第116話 負傷
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み込む。
 そして、

「流石に今回は長門さんの意見が正論ね」

 そう話し掛けて来る綾乃さん。そして、何故か人差し指を一本立て、

「武神くん。私の指が何本に見えるか答えられるかしら?」

 ……と問い掛けて来た。かなり小さい目の手に繊細な指。肌理の細かな肌は白い。
 まぁ、彼女自身は俺の意識やその他がしっかりして居る事に気付いているとは思いますが、それを証明するにはこう言う検査も必要ですか。
 流石に救急車などを呼ばれると問題が有りますし、ここから保健室に連れて行かれるのも少し問題が有りますから。

 ただ……。

「綾乃さんの指ならちゃんと五本あるように見えて居ますよ」

 真面に一本と答えるよりはこちらの方がより俺らしい。そう考えてへそ曲がり間違い無し、と言う答えを返す俺。
 俺の答えを聞いて、海よりも深いため息をひとつ。もっとも、これはかなりワザとらしかったので、俺の答えをある程度予測して居たと考える方が妥当か。

「問題はないみたいね」

 武神くんに性格的な問題が有る事ははっきりしたけど。暗にそう言いたげな雰囲気で俺を一瞥した後に、綾乃さんはそう言った。
 そのような小さな事柄にも違和感を覚える俺。いや、違和感と言うよりは疎外感。向こうの世界の綾乃さんなら、俺の答えぐらい聞く前から既に知っているはず。

 矢張り、ここは俺の故郷ではない。

「それじゃあ、審判さん。特別代走をお願い出来ますか?」

 明かり取りの窓から差し込んで来た月光を見て、故郷を思った古の詩人に思いを馳せる俺。そんな俺の些細な変化に気付いて居る……とは思いますが、それでも余計なツッコミは不必要と考えたのか。綾乃さんはテキパキと次の策に取り掛かる。
 そして、その策は俺が考えた物と相似。ここは綾乃さんに任せても良いでしょう。

 そうして――

「あなたが武神くんの代わりに一塁ランナーとして行ってもらえるかしら?」

 その場に集まった全員の顔を確認。そこから、少し離れた場所に視線を移し、俺の周りを囲むように集まった女生徒たちから離れた場所に存在するふたりの男子生徒の内、九番のカニを指名する綾乃さん。
 確かに残った選手の中で足が速いのは……多分、有希か万結。但し、両者は次とその次のバッター。流石にこの二人は無理。次にベンチに残った選手の中で打順が一番遠いのはハルヒなのですが、彼女は未だ投手。記憶が確かなら投手と捕手に特別代走役は出来なかったと思いますから……。
 いや、そもそも……。

 特別代走。試合中の負傷などにより、治療が長引きそうだと判断した場合に認められる代走。この場合に送り出される選手はチームに指名権はない。……つまり、今回の場合、六組の方から代走として送り出す選手を指名する事は出来
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