第6章 流されて異界
第116話 負傷
[6/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
球は危険球で一発退場じゃないんですか?」
珍しく……おそらく、俺と出会ってから初めて朝比奈さんの怒った声と言う物を聞けたような気がする。そう考えながら、自らの現状のチェックを開始。
意識はある。それに、命には別段問題がある訳ではない。硬式球と言う、人を殺す事が出来る凶器を側頭部……多分、ヘルメットの耳当ての少し上の部分と言う、人間の急所に受けてこのレベルの被害で収まった事を幸運と思うべきなのでしょう。
……いや、呪詛避けの護符がその効果を発揮した事から考えると、先ほどの球には明らかな死の呪いが掛けられていた、と言う事。もし、対策を行って居なかった場合は、俺の生命はここで潰えて居た可能性もゼロではなかったと言う事でしょうか。
ヘルメットは外れ、大地に横に成り、更に、手で瞳を覆ったままの状態でそう確認を行う。尚、瞳を手で覆って居るのは光と言う外部情報すらウザったく感じたから。
「それは違う」
その瞬間、俺に一番近い位置に近付いて来た気配が大地の上に座り込み、弾力があって、更にしっかりとした何かの上に俺の頭を乗せる。
妙に落ち着かせる彼女の香りと雰囲気。頭の下に感じているのはおそらく彼女の太もも。
頭の上から覗き込んで来る彼女の気配を、そして、ボールが当たった側頭部には彼女の右手がそっと触れるのを感じた。
その瞬間、閉じられたままの目蓋の裏に感じる淡い光輝。但し、俺の目は未だ閉じられ、更に自らの右手にてしっかりと押さえられている為に、外界の光を感じるはずはない。
この光輝は……。
「ちょっと、有希。頭を強く打った人間をウカツに動かさない方が――」
割と真面。そんな怪我、つばでも付けとけば治るわよ。そう言いかねないと思って居たハルヒから、かなり真面な台詞が発せられた。
ただ、
「いや、ハルヒ。問題はない。意識ははっきりしているから大丈夫や」
あまり大丈夫とは思えない声、及び雰囲気。未だ目を覆った手の平を外す事なく、そう会話に割り込む俺。このままでは有希に矛先が向きかねませんから。
多分、有希は俺から発散されている気配から、俺の状態がそう心配しなければならない状況ではない、と考えて行動したのでしょう。但し、その説明を彼女が為せるとも、まして為すとも思えません。ここは、当事者の俺から一言、付け加えて置く事が正解だと思いましたから。
しかし、
「あんたの大丈夫と、遅い出前の催促電話の答え、今出た所です、……は一切信用が出来ないのよ」
一応、心配してくれているのでしょうが、何となくネタにされて居るような気がするハルヒの答え。ただ、ハルヒの前では冗談ばかり言っていたので、俺に対する認識がこう言うレベルでも仕方がない、と言えば仕方がないのですが。
多分、戦闘時
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ