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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第116話 負傷
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る事のなかった冷たい空気を感じる。そう、それはまるで、目の前のマウンドに立つ男の身体の中に密封されていたかのような冷たい空気。
 その異常とも言うべき冷気が、俺の全身を。見開いたまま、瞬きひとつ許されない眼球を。そして、ありとあらゆる部位――内臓すらも撫でまわすように俺の周囲で渦を作り出した!

 自称リチャードから離されたボール。その縫い目ひとつひとつが確認出来るぐらい、非常にクリアな映像。この回転はカーブ・スライダー系の回転。そのボールが通常のストライクゾーンからはかなり離れた軌道を描きながら――

「バカ、避けなさい!」

 刹那。何故かその声だけは、すべてが引き延ばされた空間内でクリアに聞こえる。
 その声と同時に俺の目の前の空間に発生する魔法陣。これは俺が使用する物理反射と同じ物。つまり、有希、もしくは万結が唱えた仙術。

 しかし!
 身体の自由を回復させ、無様に後方へと倒れ込みながら見たその空間。其処に突如発生した魔法陣と呼応するかのように発生する黒い何か。それはまるで自ら意志を持つ何かのように、空中で起動した魔法陣に纏わり付いて行く。
 これは……黒い瘴気。ヤツラ――自称ランディや自称リチャードが身に纏う得体の知れない何か。

 常人には見えない精霊の光輝を放つ魔法陣と、それを徐々に侵食して行く黒き瘴気。
 そうして――
 そうして、その呪いとも、魔法とも付かない黒い何かによって無効化された空間をつき抜けて来る硬式球!

 身を捻りながら、ゆっくりと後ろに倒れ行く俺。その俺をまるで自動で追尾するかのような軌道を描くボール。
 未だ間に合う! 刹那の閃き――術式の多重起動。ひとつはヘルメットの強度を増す術式。
 そしてもうひとつは、迫り来る凶器と俺の頭との間に不可視の壁の構築。完全に防ぐ事は出来なくても僅かに直撃を防げば、この場には綾乃さんがいる。
 彼女ならば最悪、俺を黄泉の国からサルベージする事は可能!

 文字通り側頭部をハンマーで殴られたかのような衝撃。脳が直接揺さぶられたかのような感触で視界が揺れ、猛烈な吐き気が――
 同時に装備していた呪詛避けの護符が効果を失った事を感じた。
 ヘルメットが強化され、肉体的にも強化された俺にここまでの衝撃。普通の人間だったのなら、最悪、頭が消し飛んでいたとしても不思議ではない威力。

「ちょっと、何よ、今のはっ!」

 今の死球は、あんた等のチームのヘタクソなサードが負傷退場させられた事に対する報復じゃないの!
 吐き気と側頭部に受けた衝撃から回復し切れず、未だ目が開けられない俺の周囲に集まった人の気配の中から、一際怒りの度合いの大きな人物が騒ぐ。
 ……と言うか、オマエの声は頭に響くから騒ぐなハルヒ。

「そうですよ、審判さん。今の
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