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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第116話 負傷
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のか。
 何にしてもチャンスの芽が出かかったのは事実。

 そう考えながら左打席に入る俺。ただ、入った段階で少し後悔。俺は次の回から投手としてマウンドに登らなければならないのに左打席に立つ、などと言う少しウカツな事を為した事に、打席に入ってから気付きましたから。
 軽くヘルメットを取って主審に挨拶。その後、所定のルーティーンに従い、バットを構える俺。スタンスは狭からず、さりとて広からず。無暗矢鱈とバッターボックス内の土を掘る事もなく足場を決め、バットの高さも普通。非常にシンプルかつ、何処にも余分な力の入っていない自然なスタイル。

 まぁ、確かに右投げの投手が、右腕が身体の前に来る左打席に入るのは、もしもボールが当たった時にどうするのだ、ボケ! ……と言う野次を野球に詳しい人に掛けられる可能性も有りますが――
 それでもバットを構えるまでに行う所定の動作は行って仕舞いましたし、今からウカツに打席を右に変えると、守備妨害を取られてアウトを宣告される危険性が有るので――

 初球はこのまま左打席で対応するしかないか。
 かなり甘い見通しで、そう考える俺。いや、甘い見通しと言うよりも、朝倉さんに気を取られ過ぎてその部分に気が回らなかった俺のウカツさを反省すべきでしょう。

 セットポジションからの第一球。一応、朝倉さんのスチールを警戒してなのか、ランナーを目で牽制してから――
 刹那、ヤツからの気配が変わった。

 それは巨大な何かであった。
 重苦しい何か、でもあった。
 ただただ、深淵なる闇の向こう側に(わだかま)る……俺には想像も付かない黒い何かであったのだ。

 俺を見つめる自称リチャードの瞳が光る。如何なる感情とも無縁の光……虚無の光を湛えて。
 ゆっくりとしたモーション。しかし、今回もランナーは動く事が出来ず。おそらく、俺の瞳がゆっくりとした動きだと認識しているだけで、他の人間からは普通のクイックモーションに見えて居るのでしょう。

 その瞬間、身体の機能やその他から意識だけが切り離されたように感じた。アガレスの能力を全力で起動させ時間が異常に引き延ばされた状態。一秒を万に。刹那を億に切り刻み、意識だけは明確に。しかし、身体の自由……瞬きすらも許されない状態に……。
 そう。それはまるで身体の芯が氷で出来たかのような感覚。冷たく、そして動かない状態。各部の関節も動かず、無理に動かそうとするとその場所から脆く崩れ去って仕舞うような恐怖。

 左バッターボックス内で目を見開いたまま固まる俺。普段は自然な……。何の力みも感じさせる事のない自然なフォームで立つ俺が、この時は不自然に背筋を伸ばした姿勢で凍りついているのが自分でも分かる。

 張り詰めるように、周囲から音が消えた。
 そして、それまで感じ
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