第6章 流されて異界
第116話 負傷
[3/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
おそらく、インコース高目。バントをするのには一番難しいコース。ヘタクソな人間だとボールの下に当てて、打ち上げて仕舞う可能性が高いコース。
一球目と同じようにバントをする構えを取る朝倉さん。その動きに合わせて、更に前掛かりと成るサード。
しかし!
一瞬の内にバットを引き、そのまま一閃。インコース打ちの基本。バットのヘッドを返す事なく鋭く振り抜かれた打球はライナーとなり――
打球を叩き落とす為に突き出されたサードのグラブの僅かに下を抜け、打球はそのまま左胸を――鎖骨の部分か、そのすぐ下の部分を直撃。ボールはそのまま三塁側のファールゾーンへ。
そして、三塁手の方はその場で打球の当たった部分を押さえながら蹲った。
あの瞳の不穏な光と、意味あり気な首肯きの理由はコレか。確かに、九組のサードの守備はイマイチ。バントの構えをすれば早い段階から動き出すのは間違いない。
そこに、引っ張り易いコース。当然、バントを失敗させようとするのなら、インハイに投じるのがセオリーと成るのですが……。
もしも彼女がインコースの高目を投げさせる為にバントの構えを行い、動きの悪いサードを強襲するような打球を打ったのだとしたら……。
一塁上で怪我をしたサードに対して軽く頭を下げ、その後、バッターボックスに向かう前の俺に対して軽く笑い掛けて来る朝倉さん。
その笑みは普段通りの彼女のソレ。しかし、最前の彼女の態度やその他から考えると……。
確かに偶然の可能性もある。しかし、三回の表の九組の攻撃が同じようにサード強襲の内野安打から始まった事などから強ち、飛躍し過ぎた想像と言う訳ではないと思う。
ただ、違う点と言えば――
蹲った九組の三塁手の周りに集まった生徒たちの輪から主審に向かって、三塁塁審が大きく両手でバツを作って見せた。その後、立ち上がった三塁手はそのままベンチの方へ。未だ一歩進む毎に顔をしかめている様子から、ここから先、試合に参加するのは難しいでしょう。
もっとも、一応、腕は動かせているようなので単なる打撲。おそらく骨に異常はない、とは思います。一番折れ易い鎖骨に、あの勢いの打球が当たって無事に終わるとも思えないので、不幸中の幸い――鎖骨への直撃だけは避けられた、と言う事ですか。
そう。硬式球を使用して、更にあの勢いの打球。有希と同じ人工生命体の朝倉涼子が放った猛烈なライナーを受けて、奇跡的に打撲で済んだのですから喜ぶべき状況なのでしょうが……。
ただ、ウチのチームの弓月さんはグラブで弾いただけで、怪我はしていません。
女性全体が怖いのか、それとも覚悟を決めた朝倉さんが怖いのか。将又、すべてが偶然の重なりにより発生した事態な
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ