第6章 流されて異界
第116話 負傷
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「ねぇ」
九組のスコアボードに初めてゼロの文字が書き込まれた裏の攻撃。先頭の朝倉さんが右打席に入るのを確認した後に、ネクストバッターズサークルに歩み行く俺。
その俺に対してベンチの方向から声を掛けて来る女生徒。
……と言うか、俺の事を名字や名前で呼ばない人間は四人。で、その内のふたりは直接、声を使って呼び掛けて来る事は皆無。そして、もう一人が声を掛けて来るとしたら、それは……ちょっと、こっちを向きなさい、と言う何故か命令口調となる可能性が大。
コイツ、普段は妙に偉そうなのに、何故か対応が柔らかい時があるのは、人との付き合いを犠牲にして術や体術の取得にこれまでの人生を費やして来た者と、一応、人間社会で生活して来た者との差が現われているのかも知れないな。
そんな、妙な方向に思考を漂わせながら、振り返る俺。そして、
「何や、何か用事でもあるのかいな」
ただでさえ審判に目の仇にされて居るから、次打者としてさっさと所定の場所に行かなきゃならん。用があるのなら手短にな。
瞳に映った長い髪の毛を今は運動の邪魔にならないようにポニーテールに纏めた少女に対して、割と素っ気ない感じでそう答えを返す。もっとも、ハルヒと少々話し込んで居たトコロで、妙な嫉妬の炎で焼き殺される事はないと思うのですが。
それに既に三対十。七点の大差を付けられた試合で有る以上、ここからの逆転劇が有る、などと信じている人間は少ないでしょう。
もしかすると、SOS団関係者以外には存在しない可能性も有りますか。
「もうピッチャーをやるのに飽きたから、次の回からあんたが投げなさい」
もう飽きたから、ねぇ。
正直に体力的に限界だ、……などと言う訳はないか。コイツは妙に見栄っ張りと言うか、負けず嫌いなトコロが有るから。多分、他人に弱みを見せたら負けだと考えているのでしょうが。
「オールライト」
問題なし。かなり軽い調子の答え。それに、そもそもが、あの投げ方では長い回を投げるのは難しい事は最初から分かって居ましたし。自分のスタミナ消費を無視した全力投球。三回が終わるトコロまで投げ切っただけでも上々でしょう。
三対十、……と言う一方的なスコアはここでは無視、するとして。
「後の事は万事、この俺にお任せや」
ドロ船に乗った心算で後ろから俺のピッチングを見ていたら良い。
聞く方……後を託す方からしてみると、不安度百二十パーセントのオチャラケた台詞を続ける俺。口調もフザケテいる、としか考えられない口調。但し、俺自身が、現状をあまり楽観視していないのは事実。
何故ならば、ここまで完全なアウェーの場所で、更に能力に制限が加えられる以上、他の連中は未だしもハルケギニアからやって来た異世界人……いや、異形の神の|現身
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