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モンスターハンター 風の弾弓少女
中編
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受け、ピリカレラが呼んだ救助アイルーによってベースキャンプまで搬送されたのだ。

「……くそっ」

 小声で悪態を吐きつつ、起き上がる。だがその怒りは竜ではなく、自らの不甲斐なさに向けられたものだった。彼の太刀はナルガクルガに僅かに擦ったのみで、後は完全に手玉に取られたのである。そして死の恐怖が、未だ脳裏に焼き付いていた。まるで今まで竜に抱いていた憎しみが、全て自分に返ってきたかのようだ。

 頭を抱えながら体を起こし、テントからゆっくりと歩み出る。川のせせらぎが聞こえた。長期戦に備えて食料の確保も考え、川の側にテントを設営したのだ。空にはすでに月が昇り、星が瞬いている。こんな時間になるまでずっと眠っていたらしい。


 月光に照らされ、川辺に立つ少女の後ろ姿が見えた。小振りな釣り竿を後方へ掲げ、鋭い振りでルアーを放つ。虫を模した疑似餌は本物の昆虫のようにふわふわと宙を舞い、水面へと落ちていく。
 疑似餌が水に着く瞬間、魚が飛び出した。誘われるがままに食いついた魚は針にかかり、ピリカレラが竿を上げると空中へすっと釣り上げられた。だがすぐに針から外れ、川へ落下した。わざと逃がしたのだとルーヴェンには分かった。彼もたまに釣りをやるが、まだ小さい魚は逃がすようにしている。ピリカレラは手首の捻りで巧みに竿を操り、針を外したのだ。

 再び疑似餌が水面付近を舞い、誘われた魚が食らいつく。鮮やかに釣り上げられ、鱗が月光に輝いた。今度は大型だ。僅かな手首の動きで、振り子のようにピリカレラへと接近し、そこで針が外れる。魚は吸い込まれるように、彼女の腰につけられた魚籠へと収まった。

 ルーヴェンの視界の中で、竿を操るピリカレラの姿は時折景色に溶け込んでしまう。彼女の纏っている桔梗シリーズは決して地味な防具ではないが、それでも自然の中に飲まれるかのように、存在感が希薄になっている。魚からはただの木や石のような自然物に見えているかもしれない。初めてナライと共に狩りに行ったときも、このような光景を見たことがある。すぐ目の前にいるはずの師の姿を、ルーヴェンは一瞬見失ってしまったのだ。
 ピリカレラも師と同様、我が身を自然の一部とする技術を身につけている。天才と呼ばれるルーヴェンが、未だに真似できない技術を。

 数匹の魚を釣り上げ、ピリカレラは魚籠を一瞥して身を翻した。ルーヴェンと目が合う。

「あ……大丈夫?」
「……平気さ」

 足早に駆け寄ってくる彼女に、ルーヴェンは静かに応じる。

「ナルガクルガはどうなった?」
「こやし玉で追い払った。追うのは明日にした方がいいわ」

 モンスターの糞を利用したこやし玉は、刺激臭でモンスターを追い払うための道具だ。嗅覚が鋭い種類も鈍い種類も、大抵のモンスターは体に異臭がつくのを嫌う。天
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